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2006年 10月 28日

面白くて軽い男

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ココスのボーイ、ロミオは、地元マラテ出身の26歳。昔、かなり遊んだ口らしい。
とても面白いキャラの持ち主である。
見ていると、踊りながら巧みな口上で客をテーブルに誘導する。
こういう仕事って、元遊び人の方が向いているのかな。
軽さだけが信条の調子の良い憎めない男。日本の盛り場にもいる、いる。
結構もてるんだよな。
面白いから女達もついつい惹かれる。
軽さではメシは食えないから、女達は次々逃げていく。
ロミオもその典型。
結婚はしたことがないが、ロミオには二人の子がいる。
最初の子は、2歳の女の子。女性は、ロミオに愛想をつかし、子を連れてアメリカ兵のもとに走ったんだと。
早い話がロミオ、捨てられたのさ。
先日、その女がアメリカに行くというので、子供を見せにココスまできていた。
結構、未練ありげにも見えた。
そして、落ち着いたら、アメリカに呼んでもらう約束をしたんだと。
軽いだろ。何を考えているんだろな、この男。
今度はアメリカ兵の方が捨てられるのかな。
実現したりして・・・・

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「二人の子がいる」とさっき表現したけど、これはロミオの言葉を借りただけで、正確な表現でないかもしれない。
二人目は、新しい彼女のお腹にいるのだ。12月に出産予定なんだと。
佐太郎、柄にもなく、アドバイスをしちゃった。
「ロミオ、アメリカに行くなどと夢のようなことを考えないで、今いるジュリエットをまずは大切にしろよ!」
これって、ロミオ的な生き方と相反するよな。余計なお世話だったかな。
でも、ロミオ、殊勝なことを言っていた。
生まれてくる子の為にも、今のお店でしっかり働くんだと。
果たして・・・

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車道にせり出したテーブルと客引きをしているロミオ
後ろの席でオレンジ色の服を着ているのが女房。

腰が低くて、世話好きで、良い奴だ。
多分、浅いつきあいでは、なんて条件がつくかも知れないが。

日本からもっていったワインをココスのテーブルでみんなで飲もうとした。
栓抜きがない。と、ロミオ、やおら、ボトルを持って、斜め前のビルに駆け込み、栓をぬいてきた。さすが、地元出身の遊び人。顔が広い。
知っていると、便利で、結構結頼りになるぜ。

by wakahiroo | 2006-10-28 08:48 | ○マラテ迷宮案内
2006年 10月 26日

煙草を売る少女

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    ・・・・・・ラディース・・・・・・
  雨季。アドリアティコの街角。
  降り注ぐ雨。
  11歳の少女。
  黄ばんで縮んだ時間と空間。
  ここが彼女の小宇宙。

  母と二人で守ってきた城。
  人情と虚飾の世事を見て聞いて学んだ教室。
  小銭と交換に1本2ペソの煙草を渡す。
  何も考えない。
  勝手に手が動く。勝手に口が動く。

  ネオンとヘッドライトの交錯する深夜の海。
  少女は波間を漂う夜光虫
  眠らない街で青白い燐光を発しつづける。
  いっそう凛と目が冴える。夜半の日常を記憶する。
  少女は世俗の海鳴りを聞いて育った夜光虫。

  大人たちはあたしを子供だと思って優しくする。かまってくれる。
  甘くみないでよ。
  あたし、あんたなんかより、ずっと世の中、知っててよ。
  おじさんの扱いなんて手馴れたもの。
  かまって遊んでやっているのは私の方よ。

  でも、なんだろう、この心のときめき。身体のほてり。
  女になりかけているのかな。
  女になんかなりたくない。面倒くさそうだもの。
  感じの良いお兄さんに手紙を渡して、母さんに叱られた。
  ラブレターは早すぎるって、あたしをなじるの。
  両肩を出した服を着てみたら、母さんに叱られた。
  男の気をひく挑発的な服装だって、あたしをなじるの。
  そんなつもり、なかったのに。

  母さんが言う。
  ふしだらな女になるなと。
  でも、なんだか自信がないの。
  とんでもない女になりそうな気がするの。
  だって、あたし、野心家なんだもの。
  平凡な女で終わりたくないの。

  透明な時間と空間。
  不安な心。
  降り注ぐ雨。
  容赦なく時が流れる。

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ラディース、11歳。佐太郎の最年少のアドリアティコの友達。
私達のアパートからアドリアティコの通りに出るところにあるバーガー・マシンの横でいつもバラ売りのタバコを売っているおばさんの娘。
本名は、ラディースアンという長ったらしい名だ。
母親も女房もラディースと呼んでいる。私もラディースと呼ぶようになった。
ラディースは、私のことをロロ(フィリピノ語でお爺さんという意味)と呼ぶ。
この辺りの若い子の間では、私は日本のロロで通っているんだぜ。
ところで、ラディースの後ろで煙草をふかしている女性。正確には女性とは言えないか。バクラ(オカマ)なんだ。結構、魅力的なんだぜ。じっと見られるとドキッとするぜ。

女房がこの界隈で最初に仲良くなったのは、ここの煙草売りののおばさんだ。
女房のチスミス(おしゃべり)の相手で、かつ、重要な情報源。

ラディースとおばさんは交代でタバコを売っている。
いつものシフトだと、お昼から夕方にかけては、おばさん。
学校から帰ってきてから、10時ごろまでは、ラディース。
それ以降は、また、おばさん。
ラディースが煙草を売っている間、おばさんは遊んでいるわけではない。夕食の用意等、家の用事をしている。働き者だ。
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蛍の光、窓の雪ではなく、バーガーマシンの明かりで勉強するラディース。
バーガーマシンのカウンターやテーブル席で、時には、煙草を売りながらも、宿題をやっている。良い子だ。
二宮金次郎みたいな子だろう。
親子は1分くらいの距離のところにあるアパートに住んでいる。
でも、ラディースは一人ぼっちで部屋にいるのが嫌いなようで、いつも母親のそばにいる。

学力はというと、うーん・・・
一度、何を勉強しているか、見てみたが、一次関数のグラフがあまり理解できていないみたいだった。
MATHが苦手なんだって・・・
塾通いしている同年代の日本の女の子みたいにいかないべさ。
なんたって、学校から帰ってから、毎日働いているんだもんな。
でも、大学にいくという夢を女房には語っていたそうだ。
応援したくなるよね。
タガログ語を教えてくれるかわりにMATHを教えてあげるという交換教授の約束をした。が、頭が呆けてきて根気を失った私。何時のまにか、うやむやになってしまった。
始めから予想はついていたことだけどね。
ごめんな、ラディース。

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 「母さん、いつも私を怒るけど、本当は私を頼りにしているのよ」
本当は貰い子なんだそうだ。
一卵性親子のように仲が良い。
母親にしょっちゅう怒られてふくれているが、それも兄弟喧嘩みたいなもの。
二人を見ていると、親子の絆って、血の繫がりだけじゃないってことがよくわかる。

気さくなおばさんと妹みたいな女の子。
男達は束の間の休息と癒しを求めて、紫煙をくゆらせていく。

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「ロロ~、お休みなさい」
私がアパートに帰るとき、教えた日本語で挨拶してくれる。
可愛い。

機嫌が良いときは、前を通ると「ロロ~、ロロ~」とちょっと甘えた感じでいつも声をかけてくる。
でも、気分が乗らないと、こちらが声をかけても、ニコリともせず無視する。
媚を売ったり、突き放したりしてこちらを翻弄する。もういっぱしの女さ。
とかく、女という生き物は手が焼けるよなあ。
この歳になってし~みじみ~感じるよ。
女はこわい! ハハハ。

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 「学校も、ちゃんと行っているのよ」
ラディース、今日は8時頃学校から帰ってきた。
その制服姿をパチリ。
近くの私立に通っていたが、父親が亡くなってから経済的な理由で遠くの公立に転校したのだそうだ。
父親は中東に出稼ぎ中に脳梗塞で亡くなった。
現在は、そのわずかなペンションと煙草売りの収入で親子二人、つつましく暮らしている。

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 「私、部屋よりここにいる方が楽しいの」
ビールを飲んで眠くなり、早めに帰って寝た。
深夜2時、起き出してバーガーマシンの前の所定の位置にいくと、ラディース、まだ起きている。
明日、学校が休みなのだそうだ。


12時がまわっても、こうして顔なじみのお兄さん、お姉さんやおじさん達とだべったりじゃれあったりしている。
知り合いがまわりに大勢いるので、危ないことはなにもない。

子供の時間はとっくに過ぎている。
日本なら、完全に補導の対象だな。
でも、池袋や渋谷で遊びまわっている子と、一緒にしちゃ、可哀想だよな 。

写真の皆、私の友達だ。
後ろの二人は、ロナルドさんとフィリックス。
前の若い男の子は、名前を忘れてしまった。
バンドマンで、東京の錦糸町に仕事に行くかもしれないと言っていた。
来ていたら、電話、かかってくる筈なんだけど・・・
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「アテ、大きくなったら、日本人紹介してね」
ラディース、女房にそう言った。
アテというのはお姉さんという意味だが、年上の女性を呼ぶときの敬称と用いる。
今のところ、日本人、いたく評判が良い。若い日本人はフィリピーナの憧れの的だ。
この前、ココスにきた、英語を流暢に話す日本の学生、地元のかわいい女子学生達にモテモテだった。逆ナンされていた。羨ましい!腹立たしい!
女房、「ラディース、10年後、20年後の日本、どうなっているかわからないよ。日本人、お金持ちに見えるけど、日本では、皆、一生懸命必死に生活しているんだよ。本当のお金持ちはあまりフィリピンには来ないよ。そんなことを考えるより、今はしっかり学校の勉強しなさい」
と正論を吐いていた。よく言うよ。
30年も日本で暮らすと、女房の頭の中はすっかり日本化してしまった。フィリピン社会の欠点を私なんかより鋭く指摘し、批判するんだぜ。
おいおい、お前の国だろう。もっと、温かくみろよ。
佐太郎って、結構、良い奴だろ。
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勉強途中に寝ちゃったラディース
この服だったかな。
「男の気を引きたいのか」と、肩を見せるような、はしたない服装をするなと、母親に怒られて
泣いていた。やっぱりまだ子供。
母親は怖いようだ。
母親によく怒られている。どこの国の母親も一緒だなあ。
いつもは「ロロ、ロロ」といって人懐っこいのに、そういうときはすごい顔をしてふくれている。
「スマイル、スマイル」と言っても無視する。

フィリピンでは、総じて親の権威は日本なんかよりはるかに保たれている。
老人の比率の少ないせいか、 老人を尊敬する傾向がまだ残っている。
老人なんて糞食らえの日本からくると、新鮮だし居心地が良い。
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 「この辺一帯は明け方まで賑わっているのよ」
時刻は夜12時をまわっている。
次の日、学校が休み(休みじゃなくてもいる事が多いのだが)なので、11歳のラディース、まだ、煙草を売っている。
この辺は、アドリアティコ一の繁華街。不夜城だ。夜11時ごろからが本番、夜明けまで人通りが途絶えない。
まるで新宿歌舞伎町の雰囲気だ。もっとも、バクラさん、ホモさんが多いので、新宿2丁目の雰囲気もあるかな。

この日は雨模様で少し閑散としている。
そろそろ母親がきて交代するだろう。
ラディースの隣りにいるのは、ロナルドさん。
バランガイ(フィリピンの最小の行政単位)の委託を受けて、この辺一帯を見張っている。
ロナルドさんは、埼玉の工場で2年ほど、働いたことがあるので、ごく簡単な日本語を話せる。
すぐ近くに自宅があり、下宿業、カリンデリア、ランドリー、ビリヤード場などを地域のフィリピン人相手に小規模ながら手堅く営んでいる。
よそ者の私達にとって、頼りになる相談相手だ。
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この辺には、佐太郎、若い友達が大勢いるんだぜ。
わたしの指定席、ココス・ネストのテーブル席。後ろはバーガーマシン。
男二人は、隣りのマラテ・ペンションの従業員。
ラディース以外の女の子はカリン(?)という名の19歳。?をつけたのは、聞く度に違う名を言うんだ。ちょっと影のある子で、ひねくれたところがある。
イラン人とのハーフなのだそうだ。
妊娠2ヶ月を過ぎていたのに、カップ麺ばかり食べていた。
女房が心配して、いろいろ聞いていた。
父親はわからないのか、わかっていても言わない。
以前は、すぐ近くのディスコに入り浸りだったらしい。
この先、どうするんだろう。
来年1月に行くときは、お腹も大きくなっているよな。

「誰も育てる人がいなかったら、私もらってもいい?」と女房が突然言った。
時々、女房の考えていることがよくわからない。
でも、「いいよ」と私は即答していた。
それも、神様のお導きだよな。大切な命だ。


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このあたり一帯は、今激変しているんだぜ。
真ん中にある、赤いカウンターのような枠がラディース親子の新しいお店。
バランガイのプロジェクトで、バランガイに公認されたことになる。
借金して購入したとのこと。
煙草以外に、フィッシュボールなど、軽食も売り始めたそうだ。

女房の電話の話によると、「ココスネスト」の隣りとその後ろ側に、新しい屋台店が2軒できているとのこと。
なんだか、この駐車場。屋台村にでもなりそうな勢いだ。
1月に行くのが楽しみだ。

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ラディースに会うのも楽しみだ。
お土産を頼まれていた。何を買っていこうかな。

by wakahiroo | 2006-10-26 07:38 | ○マラテ迷宮案内