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2008年 07月 28日

散文詩「カアチャン、愛シテル」

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目黒教会で チャリティー・コンサートを聴く。

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 「カアチャン、愛シテル」
カアチャンが倒れた。
仕事中、コンクリート上に転倒。
打ち所とタイミングが最悪。
歩くこともままならず、タクシーで帰宅。

翌日、すぐ近くの東京厚生年金病院。
若きハンサムな医者の宣告。
右大腿骨頚部骨折。
即入院即手術。要二ヶ月入院療養。

あいよ。心得た。
長男の生まれた病院。オイラが脳出血で死に損なった病院。
勝手知ったる馴染みの病院。
今度はオイラが世話をするぜ。

好事魔多し。
災難はいつも青天の霹靂。
運命の女神は気まぐれ女。
意地悪な仕打ちは彼女なりの祝福。
逆らっても無駄。試練として前向きにとらえるだけ。
彼女の冷笑には微笑で応える。

手術室へ入るストレッチャー上のカアチャン。
気弱に微笑み、オイラに「大丈夫?」と声をかける。
逆やろう。
ビビーンと来るものがある。
ピンチになるまで気づかない大切な何か。
チッ、胸がつまる。切なくなる。

たった一人の待合室。
女性週刊誌をめくって寂しさを紛らす。
性悪女が命までは奪わないと知っている。
だから、心の底から一人ぼっちじゃない。

片麻痺でヨレヨレになって生きているオイラ。
傍に戻ってきてくれる人がいる。
温かな安心。確かな信頼。
ジジイのかけがえのない連れ合い。
喜・怒・哀・楽を共にする友。オイラを看取ってくれる女性(ひと)。

危機的状況になって不思議に感じる絆。
何だい? この感情は。
いたわりかい? 憐憫かい? 慈悲心かい?

思わずつぶやく。声にならない声で。
「カアチャン、愛シテル」
おもねりのない洗いざらしのこころ。
言葉の自然分娩。

還暦を過ぎたジジイ、古女房に「愛シテル」ってつぶやいた。
ハハハ。恥ずかしくないかって? 
ちいっとも。
恥とか体裁なんて感情。遠い昔、どこかに捨ててしまった。

「愛シテル」という言葉も、ずっと忘れていた。
若いときは囁いた。「マーリン、愛シテル」
ジジイになって今つぶやく。「カアチャン、愛シテル」

マーリンがカアチャンに変わっただけではない。
若いときは、渇きと欲情にかられて使った浮薄な言葉。
齢を重ねし今は、感謝と複雑な思いが溶け込んだ重たい言葉。

子を連れての家出。子を置いての出奔逃走。確信犯やったね。
1年間の別居生活。2度の離婚の危機。
どちらが悪いなんて言えないさ。
でも、いろいろあったねえ。
カアチャン、オマエ、疲れる女やった。
いんや、お互い様か。ハハハ。

猜疑心、嫉妬、憎しみ、怒り、裏切り、後悔、無念。
すべての負の感情の残滓。幾層にも堆積しブツブツと発酵。
ガス抜きが必要やったんやね。
歓喜、共感、幸福の薄い層もまだらにあったけどさ。
サプリメントみたいなもの。

噴火口から噴き出るような激情の愛。たちまちに嫉妬に転化する。
汚泥の経験とともに思い出さぬように胸中深くに漬け込まれた愛。
汚泥は今や接着剤。
負の感情は愛に変成し、静かに眠っている。

カアチャン、上半身麻酔。
意識のある中、ピンが3本入る。
最後に傷を縫合。
パチン、パチン。ホッチキスようの音。
手術終了。

カアチャン、手術台でぐったり。
オイラ、待合室でぐったり。

骨が癒合するまで動かせない。
3週間の車椅子生活。
松葉杖を使用しての歩行練習。
日常生活に完全復帰まで半年はかかるだろう。

毎日、カアチャンに会いに行くのが日課。
以前、カアチャンがしてくれたように。

でも、これからが大変。
二人してチンバよ。
ラッキー。同じよたよたペース。仲良いこった。
ハハハ、ハハハ、ハハハのハ。
大笑いして再出発!

災難は人を強くする。心の結びつきを強くする。
そう信じよう。
お互いに必要であることを痛感。

禍転じて福と成す。
神様が与えてくださった稀有の機会。
カアチャンの事故は天恵。

カアチャン、病院で心も身体も休養してくれたか。
戻ってきても苦労は続くぜ。相手が俺だもん。
労苦の日々が待ってる。
でも、共に担う労苦は喜び。
人生の核心や。そう悟ったんよ。

一緒に暮らしてきた生活の重み。
喜びを分かち合う相手がいる。
苦しみを協力して乗り越える相手がいる。
泣き言を言う相手がいる。
寄り添って生きるんや。

オイラが生きられる日は長くはないよ。
信じあう。優しさを持ちあう。
君は我が分身。
一緒においしいものを食べよう。
一緒に旅をしよう。
一緒に美しいものを捜し感動しよう。
貪欲にな。
輝いた時間を共有しようぜ。

カアチャン、愛シテル。
残サレタ時間、ヨロシクネ。

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東京ドームシティの改修されたところ。
怪我をする二日前。

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赤坂サカスにて。

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六本木・乃木神社にて

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東京ミッドタウンにて

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麻布十番にて

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神楽坂祭りの阿波踊り
松葉杖で歩けるようになり、病院の許可を取って観にいく。
7週間振りにシャバの空気を味わう。
人出がすごく、歩くのが大変だった。

by wakahiroo | 2008-07-28 19:00 | ★フォト・ポエム