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2007年 07月 31日

THE ORCHIDARIUM (その1)

   ★2007年1月~5月の比国滞在時の出来事です。
 
「THE ORCHIDARIUM」とは、リサール・パークの中にある蘭園のことだ。
英語の辞書には、orchid(蘭)は載っているが、orchidariumは載っていない。
造語なのだろうか。
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この花、始めはプラスチックでできているんではないかと疑った。
女房、忙しそうに働いていた係りの人をわざわざ呼び止めて名前を聞いていた。
5分後に「なんていう花だったけ」と聞いたら、すでに忘れていた。
始めっから聞くなよ。

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リサール・パークの蘭園を女房と仲良く散歩した。食事した。
シルバー・デートさ。たまには良いものだ。

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蘭という花について知識をほとんど持っていなかった。
高価で栽培に手間がかかるくらいかな。
と思い込んでいた。でも、ネットでちょっとしらべてみると、安いのもたくさんあり、手間もあまりかからないだってさ。よく知らないでものを言っちゃあ、いけないよな。

百花繚乱というか、花屋の店先のように花が咲き乱れている姿をイメージをしていたのだった。
無知だった。面食らった。予想が外れた。

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どこかアカデミックで植物園という感じだった。でも、これはこれで、良い感じだ。
東京の家の近くの、文京区の小石川植物園の雰囲気だった。

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ここの「BARBARA」というシーフード・レストラン、なかなか御薦めだ。

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雰囲気は良し、料理もよし。上品な味だ。
インテリアも洒落ていて、デート向きだろ。

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お昼は庭から陽光が入り、明るく開放的だ。
健全な雰囲気さ。

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午後7時のディナー。
まだ、早すぎるみたいで、客は私達二人。貸切さ。

御薦めと言った以上、プライスもつけとくね。この夜頼んだのは、3皿。
 seafood amelie   440ペソ 
gammbas       180ペソ
mushroom ala pobre 140ペソ
ライス(2枚)   15×2ペソ

 SMBライト   50×2ペソ
 赤ワイン     200×2ペソ
        計 1290ペソ
リーズナブルやろ。特徴は上品な味。
熟年カップルは、量的にもこれで十分。

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佐太郎、ご機嫌。
この赤いお薬、効くねえ。

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シルバー・デートさ。
カアチャンもうれしそうやろ。
あんまり、いいところに連れて行かないものな。
「釣った魚に餌を・・・」
おっと、禁句だ。

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結婚式とか、誕生日の大掛かりなパーテイをやることが多いようだった。
土日は貸切になっていることが多いと思うよ。
そうか、パーティに潜り込むという手もあるな。今、気づいたぜ。

この夜、写真のポスターを私と同年輩のフィリピン人の紳士が飾りつけていた。
「この方、アクトレスですか」
「いやあ、私の娘です。明日、ここで結婚披露パーティをするんです」
と、うれしそうに、答えた。
佐太郎、なんやかんや言って、人を喜ばすのが上手だろ。
ポスターには、二人がボラカイ島で出会ったなれそめが書いてあるみたいだ。
書いてある内容はクサイよな。ハハハ。

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最初来たときは、お昼。テラスで珈琲とケーキ。
甘さも控えめ。おいしいかった。

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帰り際、出口で。
結構、暑いんだけど、この格好だぜ。
倒れて以後、佐太郎のこの世の敵(かたき)は、寒さなんだ。
おっと、まだあった。金も敵だった。

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やはり、出口付近で。
最近、優しいときと手厳しいときの格差がすごいんだ。
14歳も年下なのに、いじめるんだぜ。(小さな声で)
耐えることには強いんだけど、ちとつらい・・・


  「ORCHIDARIUM(その2)」に続きます。 

by wakahiroo | 2007-07-31 18:32 | ○マラテ迷宮案内
2007年 07月 31日

THE ORCHIDARIUM (その2)

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蘭園の入口
入場料、忘れた。
確か15ペソくらいだったと思う。
まあ、気にならない金額ってことよ。

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蘭園の散歩道にて①

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蘭園の散歩道にて②




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バタフライ・パビリオンで。
オヤジ達に告ぐ!
夜、ネオン街に棲息する蝶もそれはそれで魅力的だけれど、ここのも見たらいかがかと。
余計なお世話かい。ハハハ。

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接写の技術が全くなっていないなあ。自覚はしている。
今後の課題さ。


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蝶の種類など、全然わからねえ。
佐太郎、虫の方は全く興味がないんだ。


都会の真ん中で、ちょっとしたジャングル気分が味わえるよ。
どれが蘭で、どれが蘭でないかも、全くわからなかった。
蘭の世界は奥深いらしい。ど素人がわかるわけないよな。
率直な感想。見学者には不親切な植物園だ。
もっとも、蘭について本気で知ろうとするひとなんてごくわずかなんだろうけどね。
素人に対しては素人を喜ばせる展示の仕方ってあるよな。
でも、何度も言うけど、デートには向いているぜ。

てなわけで、以下は説明なしなのだ。いや、説明できないのだ。
雰囲気だけ、味わってくれい。

密かにフィリピンの家のベランダで蘭を育ててみようとは思ってはいるんだけど・・・・

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ところで、蘭の花言葉って知っているかい。
ハハハ、常識だぜ。
彼女にしたい素敵な女の子ができたら、この蘭園に連れていくのも良いんじゃないかな。
澄みきった紺碧の空。目を和ませる緑と色鮮やかな花々。近くの喧騒が嘘のような静寂の空間。
二人っきりで庭園を歩くとロマンチックだ。
きっと、何かが起こるぜ。

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最近、老いの慰みというやつでミステリー仕立てのラブ・ストーリーを書きたくなっているんだ。
趣味としては最高だぜ。
日曜大工、日曜画家があるんなら、日曜作家ってのも面白いよな。
金がかからない。頭を使うからボケない。気持ちを若く保てそう。
死ぬまでに、3年くらいかけて一作、書いてみようかな。
生活のために書くんじゃないから、ゆっくりペースでやってみるか。
出来上がる前にこの世にサイナラしたら、未完の大作ということにしておいてくんろ。ハハハ。
そろそろ、人物設定と構想を練り始めようと思っている。

てなわけで、ちと創作練習。


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・・・・・・・・・・・・・
ロハス・ブルバードをはさんでアメリカ大使館に対面したところにスターバックス・カフェがある。
旅行者風情の欧米人。韓国語を話す若いグループ。こざっぱりした服装だが少し危険な雰囲気を漂わせるフィリピン人の男女。店内は八分通り埋まっている。昼下がりにしてはなかなかの盛況。
午後3時。隆志は約束の時間にお店に入った。
驚いたことにコーラはすでに座っていた。備え付けの新聞に所在なげに眼を通している。嘘だろう、フィリピーナが待ち合わせに約束通り来ているなんて。
好意的に言えば時間の制約から解き放たれている悠長で鷹揚な気質、悪く言えば時間にルーズでノウテンキな気質がそうさせるのか、それとも、フィリピーナ特有の見栄がそうさせるのかわからないが、1時間くらい待たされるのが普通だった。時間を守るというそんな当然のことに、隆志の中で予感が走った。ときめきを感じた。今日は何かが起こるぞ。
ゆっくりとした時間の流れを基調とする異空間の文化を劣っていると軽率に判断するほど、隆志は無知な愛国者でも厚顔な文明人でもない。
「待った?」
「いえ、少しだけ」
「君って変わっているね。フィリピーナを待たせたのは始めてだよ。今日は記念すべき日だ」
「あら、あたし、時間をあんまり気にしなかっただけなの。よくあることよ。不満なの? じゃあ、今度はたっぷり待たせてあげるわ」
「いや、そいつは結構。願い下げだな。お腹すいてる? 外で何か食べるかい」
「いいえ、食べたばかりなの。すいてないわ」
「じゃあ、お願いがあるんだけど・・・」
「えっ、なあに」
「ちょっと暑いけど、外を散歩しないかい。リサール・パークって、まだ行ったことがないんだ。ガイド代、払ってもいいんだぜ」
「よくってよ。私を観光ガイドとして使おうなんて勇気あるじゃない。すご~く高いわよ。でも、あなた、優しいから、今日はただにしてあげる。スペシャル・サービスよ」
「あんがと。涙が出てくるよ」

人と駐車中の車で混雑するロハス・ブルバードの側道を北に歩き、カラウ・アーべニューを横切るとそこはもうリサール・パーク。リサール記念像の前では、群れをなして韓国か台湾の観光客が写真を撮っている。これは好機とばかり、隆志もポケットからデジカメを取り出す。
「一枚、撮っていいだろう。君の美しい顔を東京でも眺めていたいんだ」
「あら、写真がないと私のこと思い出せないのね」
「俺って、想像力にと乏しいんだ。寝る前には、写真を眺めては君のことに思いを馳せるんだ。いいだろ」
「本当ね」
「にっこり笑わなくていいよ。君の自然の表情を撮りたいんだ」
「何よ。じゃあ、思いっきりきつい顔をしてあげる」
カメラを見据えてくるまじめくさった顔も微笑ましい。

漆黒の潤んだ大きな目、形のいい少し上向きの鼻、きりっとしながらも今にも笑みのこぼれ落ちそうな口元。
夜の薄暗い照明の下での美しい整った顔には魅了されていた。が、時折、ふとした表情の奥に、悲しみ、頼りなさ、脆さといったものが渾然と入り混じった翳りを垣間見る。何時まで眺めていても見あきなかった。
この女をもっと知りたい。白日の下で素顔を見たいという欲求にかられていた。で、神秘ののベールを剥がしてやるんだと意気込んで、半ば強引にこうして外に連れ出してきたのだ。
美形には変わりなかった。が、思った以上に色黒で健康的に見える。
あら隠しのできない太陽光の下でも美しいということは、どこにいても美しいんだろう。血管に血流がどっと流れるのを感じた。

夜とは確かに印象が違う。性格の明るさと人柄の良さが伝わってくる。
昼の光は神秘の女の妖艶さを弱めはしたが、現実の女の逞しさをクローズアップした。
隆志は惚れ直した。俺が求め続けたのこの女だ。俺が今まで独身でいたのもこの女のためだ。
確信した。もう躊躇うものは何もない。どんなことをしても、この女を手に入れるんだ。

リサール記念像の左の道を通り、公園の中ほどにある芝生の広場を進む。
暑い。ギラギラと陽光が照りつける陽光の中を歩いている人はほとんどいない。
たちまち、汗が噴き出てくる。
「ごめんね。こんなところ、歩かせちゃって。はい、ハンカチ」
「ありがとう。気がきくのね」
首と額を拭って、返したきた濡れたハンカチを鼻先にもっていき、クンクン嗅ぐ。
「うわっ。たまんねえ。いい匂い。卒倒しそうだ。ビニール袋に入れて日本に持って帰ろうかな」
「ばあか。エロいのね」
「そうさ、思いっきりエロいんだぜ。がっかりした?」
「フン、男なんて皆エロいわよ」
澄み切った青空。吹き渡る風にたなびく色とりどりの旗。ピンクや白の美しい花の咲き乱れる水辺。
二人して冗談を言い、顔を見合わせ見合わせ歩くと、ぎこちなさもすっかり消え、打ち解けた心になる。
太陽が半端でなく照り付けている日中は当然のことながらベンチに腰掛けている人はいない。
「こんな素敵な陽光が降り注いでいるのに、誰も浴びようとしないなんて、日本では考えられないな」
「好き好んで色黒になろうなんてするフィリピン人はいないわ」
「東京では、日焼けサロンというところで、お金払ってガングロになるんだぜ」
「ガングロって、なあに?」
「顔の色の黒いこと」
「じゃあ、あたしって、ガングロなの?」
「うーん、だよな。でも、日本のガングロよりはずっと上等で品がある」

コーラにさりげなく手を出すと、躊躇することもなく、握ってくる。血管の中で血が沸騰する。
女の子と最後にこんな風に散歩したのは何時だったか、思い出せなかった。

公園中央のマリア・オロッサ・ストリートを渡ると、右手にラプラプ像が遠望され、左手の煉瓦造りの門の上方に「THE OCHIDARIUM」と書かれている。
「ここ蘭園だよね。蘭の花って10万種以上あるんだってね。色鮮やかで造形がユニーク。華麗でかつ繊細。素晴らしい香り。友達に蘭中毒がいてね。自分でランチュウと言っているんだけど、はまったらやめられないそうだ。入ってみない?」
「そうね。あたし、よく知らないけど・・・ いいわよ」
入場券を買い、入口から続く花のアーケードの下を進む。
庭園の小さな滝の前に来る。
「オーキッドの花言葉って、知っている?」
「いいえ、知らないわ」
「君みたいだね」
「えっ、何なの?」
「蘭の花言葉は美女だそうだよ」
「あら、嫌だわ」
「感じていてくれたと思うけど、僕は君が好きだ。好きだ。好きだ。死ぬほど好きだ。この突き抜ける青い空くらい君が好きだ」
平凡な言葉でも、繰り返しは女の子を喜ばせる。
「うれしいわ」
「君は蘭の化身だ。美しくて良い匂いがする。僕は完全に蘭中毒、いや、君に中毒になってしまったようだ。もう君なしでは生きられないできるなら、このままずっと僕のそばいてくれたらなあと思っているんだけど・・・・。僕じゃ、嫌かなあ」
「そんなこと、な・・」
顔を赤くしているコーラを、背骨が折れそうなくらい抱きしめてルージュの剥げかかった乾いた唇に軽くキスをする。
「俺、カレッサのように、目の周りに覆いを作り、他の女には見向きもせずに、君を乗せて突っ走るよ」
「あら、本当?」
「目隠しなんか必要ないか。他の女性なんか君に比べたら、しおれた花さ。道端の名もない雑草さ」
「あら、まあ」
「ねえ、二人で僕達の物語を作っていかないか。最高の特別の愛の物語をね」
「うふっ、反対なんてできないわ」

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・・・・・・・・
滝の前を離れ、昂揚した心のまま再びゆっくり歩き出す。
丈の短いファッショナブルなデザインの薄紫のTシャツにジーンズ生地のホットパンツ。肌のあらわに出ている、コーラの腰に手を回す。はちきれるような弾力と適度に湿ったぬくもりが官能を刺激する。スキンシップは心の距離を近づける。
シダの垂れ下がったなだらかな小道を高ぶった心で上りながら、隆志は心の中で冷静になることを呼びかける。またしても予感がうごめく。俺はこういう状況で失敗することが多い。落ち着け、落ち着け。
坂道を上り切ったところにバタフライ・パビリオンがある。入口にはドアがなく、鉄の細い鎖が十数本、暖簾のように地上20センチメートルあたりまで垂れ下がっているだけで、外気と室内の空気を遮断するものはなのもない。蝶を外に逃さないためには鎖の暖簾でけで十分らしい。
中は少しむっとして温室のように感じられる。足元には水が流れ、咲きそろった小さな花の周りを小型の蝶が群れ飛んでいる。
「ね、ねえ、隆志、蝶々のこと、フィリピノ語でなんて言うか、知っている?」
「いや、知らないな」
「パルパロと言うのよ。それからね。女好きのプレイ・ボーイもパルパロって言うのよ。花から花へ美味しい蜜を求めて遊びまわるからかしら。私の元彼、皆パルパロだったの。ハンサムで若い男達だったから仕方なかったのかもしれない。けど、それにしても、私って、つくづく男運がないのよ。好きになった男は例外なくパロパロ。捨てられる軽い女を演じてばかり・・・でも、私って独占欲が強くプライドが高いの。最初に好きになってつきあった男、刺したのよ。他の女といちゃついている彼を許せなかった。気がついたら刺していたわ」
「うっ、怖いなあ」
「私はフィリピーナ。プライドは高くてよ。フフフ、覚悟しておいてね。私、パルパロ、もう絶対に許さないから。裏切ったら殺すわよ」
眼が笑っていない。背筋を戦慄が走った。同時に、何故か快感も。人間の感情って複雑だ。一筋縄でいかない。理屈で説明できない部分がある。
「君のためなら死んでもいい。いや、君になら殺されてもいいぜ。カマキリのメスは交尾の後にオスを生きたまま喰うらしいね。君に喰われて本望さ」
正直な気持ちだった。惚れ切った女になら殺されてもいい。刺されると考えるとゾクッと身震いがする。気づかなかったけれど、俺って究極のマゾヒストなのかもしれない。隆志はぼんやりと考えていた。

「日本では、君のように夜のお店で働く女性のことを夜の蝶と言うんだぜ。君こそ男達の間を華麗に飛び回るパルパロじゃないのか」
外部と内部を分け隔てるノレン状の鎖に思いはせ、ある考えに行き着いた。
コーラを自分の手元から絶対に逃したくない。それにはがっちりと隙間なく遮断するドアよりも鎖を垂らしておく方がよさそうだな。俺は今まで女性を完全に支配しようとして失敗してきたような気がする。

前に立つコーラの後れ毛から醸し出すほのかな香水の匂いと熟し始めた女の匂い。
くらっとした。たまらない。もう君のためならなんでもするぜ。
コーラはむきになってしゃべり始める。
「そうよ。私はパルパロ。蝶々よ。夜だけじゃなく、昼間も自由に飛び回るの。自由よ。私、誰の物にもならないわ。私を束縛しようと思ったら大間違いよ」
振り向くと、手をヒラヒラさせて、辺りを走り回っている。子供みたいだ。20歳を過ぎた女のやることか。
蝶の写真を撮ろうとしていた隆志はあっけに取られてしまった。
成熟と幼児性の混在。そのアンバランスがなんとも面白い。
さっきまでつまらなそうだった。でも、今はいたずらっぽい笑みを浮かべて夢中に飛び回っている。。こんな顔もするんだ。また少し彼女のことを知ったような気がした。お店の顔とは違う。さらに心の距離が近づいている。対等な男と女として向かい合っているような気がした。

パビリオンの中は丈の高い草むらになっていて小道が迷路のように入り組んでいる。
いつのまにかコーラは茂みの向こうに消えていた。しばらくして草むらのおくのでしのび笑いが聞こえる。
今度は隠れんぼか。よ~し、遊んでやろう。なんだか遠い子供の頃に返ったようで、と素直な気持ちになる。
あわてふためいてやろう。
「コーラ、コーラ、どこだよう。君がいないとさびしいよう」
見通しのいいところでじっと待つことにする。やがて動いてくるさ。
いた。いた。単純だ。すぐに動いてくる。後ずさりしてくる身体を後ろからいきなり抱きすくめる。
左手で下腹部を押さえ、右手で口を押さえる。
「声を出すな。静かにしていれば、命は助けてやる」
「うっ、く、苦しいわ。やめてえ。ゴメン・・許してえ」
「俺の言うとおりすれば、許してやるさ」
右手で顎を後ろにむけ、強引に唇を奪う。
「ムムム・・、バカあ、苦しいってば」
言葉とは裏腹に背中に回った手に力が込められ、舌を吸い寄せてくる。
情熱的だ。可愛い。こいつのキスはなんて気持ちがいいんだ。隆志は恍惚となる。

後ろから腰を抱くと、タイタニックの映画の姿勢で、体重をあずけ手をバタバタ扇ぐ。
蝶の真似か。お尻が敏感な部分にあたる。下の方を突き抜ける熱い衝動。
ムラっとする。刺激的。たまらないぜ。まずい、まずい。真昼の公共の場でのうずき。
理性がなんとかほてりを抑える。
「飛ぶわ、飛ぶわ。私は未来へ向かって自由に飛びつづけるわ。あなたは疲れ切った私の帰る所。それでも良い?」
よし、コーラの休憩の場、拠り所になってやろう。
果てないながらも、うっとりとするような余韻。

陽も翳ってきた。
「お腹、すいてきたな」
「そうね。すいてきたわ」
蘭園中央に位置するレストラン「BARBARA」に入る。
★赤ワインを傾ける。コーラの目の周りがほんのりと染まっている。テーブルの下で彼女の手にそっと手をおく。
「僕の計画を少し話してもいいかい?」
「ええ、な~に?」
コーラの手をきつく握り、
「近い将来、僕達の間に君にそっくりなオーキッドベービーを作りたいんだ」
「まあ、そんな、あたし・・」
「女の子が生まれたら、その子に蘭(ラン)って名前をつけるのが僕の夢になったんだ」
彼女も握りかえしてくる。
「不思議だわ。私も同じような気持ちだったの。その夢、協力しちゃおうかなあ」

「あなたって、タフで、激しくて、情熱的で、とても頼りがいがある。好きだわ」
彼女、顔を赤くしている。ワインのせいばかりではない。昨夜の情熱的な出来事を思い出したらしい。
「あなたの顔って、野性的で、個性的で、とても素敵。私、とても好きよ。でも、ハンサムじゃないわ。女の子、あなたに似ているかもしれないわね。どうする?」
「そうか。そういうケースもあるか。想定外だな。うーん。そのときもやっぱしランでいくよ。日本語の漢字は少し違うんだけど、乱という字でね。
ちょっと乱れちゃったものな。大きくなったら、きっと男共を狂わせるぞ」
「よくわからないわ。ねえ、で、男の子が生まれたら、どうするの?」
「そうか。そういうケースもあるか。想定外だな。そうだなあ。蘭丸にしようか。美少年になるぞ。でも、なんだかホモになりそうだなあ。まあ、いいっか、僕は進んでいるんだ。そんなことに差別意識は持ってないんだぜ」
隆志は、ワインの酔いではない酔いで、頭はボッとしているのに、口が勝手に滑らかに回ってしまう。

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・・・・・・・・・・・
午後8時を回った。
レストランの外はもうとっぷり日が暮れている。
蘭園を出ると、左手にライトアップされたラプラプの像が木々の間に屹立している。来た道をゆっくりと引き返す。人通りはまだ昼間とさほど変わりがない。
が、気のせいか、コーラが身を硬くしているのが、絡めた汗ばんだ指の間からから伝わってくる。
ジープニーが行き交うマリア・オロッサを渡る。明るく灯を燈した売店が道路に沿って並んでいる。広がった芝生の上は薄暗がりで、恋人達が囁きあいハグしキスしている気配が感じられる。
突然、コーラが歩みを止めた。外灯の薄明かりの下で、隆志の手を堅く握ったまま、向き合ってじっと眼を見つめてくる。訴えかけるような表情。意を決したように口が開く。
「さっきのお話、とてもうれしかったわ。でも・・・、私、言っておかなければならないことがあるの」
「なんだい。怖いな」
向けていた視線を下に落とす。魅力的な長いまつげがかすかに震えている。
「実は、私、3歳の女の子がいるの。ジーナって言うのよ」
「・・・・・・」
きた。覚悟はしていた。
魅力的なフィリピン女性なら二十歳前後で子供が一人くらいいるのは珍しくもなんともない。
コーラの漂う色香。男を扱いなれた所作。男を十分に知っているのはわかっていた。ひときわ目立つ憂いを含んだ大きな眼。彫りの深い整った容貌。出るところは出た引き締まったスレンダーな姿態。男共が黙って指を加えて見逃すはずがない。
ハイティーンでのハンサムな男との恋。そしてお定まりの結末。想定内だ。
「隠すつもりはなかったけれど、出会って早い時期に言うことでもないわよね。でも、もう言わないわけにはいか
ないわ。こんな私、受け入れられて?」
「う~ん、そうか。ちょっと心を整理したい。少しだけ時間をくれないか」
近くのベンチに腰をおろす。心は決まっていた。が、少しだけ考える振りだけはしなくては。
「父親って、どんな男? 一緒に暮らしているの? 今も一緒にいるなら、それはちょっと無理だな。君のためにもこれ以上深入りしたくない」
「私、男なんて選り取り見取りだったわ。ジーナの父親は最初に死ぬほど好きになって夢中になった男よ。そう、私が刺して一緒に死のうと思った男。ハンサムで背が高くて目が綺麗で優しくて女の子ならほっておけないタイプの男だった。私達、人も羨む、最高のカップルだったわ。ジーナを18歳で生んだの。でも、もうとっくに別れているの。どこにいるかもわからないわ。未練が全然ないと言えば嘘になるけれど、もう一緒になることは絶対にないわ。それくらい傷つけられたし憎んだの。向こうも私以上に私を恨んでいるわ」
「そうか。今の俺にはうれしいな」
「心の空白を埋めようと、その後、何人もの男、いや何十人もかな、とつきあったけれど、だめだったわ。荒れた生活を送っていたわ。今は、ジーナが生きがい。私の宝物。ジーナを受け入れてくれない男とはつきあえない。こういう私を受け入れられて?」
お金だけが目的なら、こんなことは言わないだろう。本気でつきあうつもりだから言い出したのだろう。相変わらず自分に都合よく解釈した。己の甘さを封印し、腰にまわした両手を強くひきつけて耳元に囁くように即答していた。
「君の子供は君の分身。君と同じように愛するのは当たり前だろう。ジーナっていう子に早く会いたいよ」
「よかった・・・・。ほっとしたわ」
薄暗くてよくわからないが、瞳が濡れているように感じられた。身体が小刻みに振動している。
ただうれしさだけではない何か他の感情に突き動かされているような気もした。

「いろいろ、あったの。半年前、ジーナをずっと面倒みてくれていた母が死んで、続いてすぐに、私を精神的に支えていてくれた一番上の姉が入院してしまったの。私、パニックになったわ。精神状態、ずっとおかしかったみたい」
「苦労したんだね」
「私の夢は、つつましいのよ。食べる物と住むところがあり、愛する好きな人達と仲良く暮らすことなの」
「俺の夢も、凡なる幸せ。大きな成功なんか求めていない。平和で温かな日常生活。君と同じじゃないかな。気が合うじゃないか」

彼女こそ待ち続けた伴侶だ。具象化された希望だ。
明るい前向きな性格、穏やかでのんびりとした物腰。存在そのものが癒し。
そのためなら、どんな代償を払ってもいいさ。
傾き掛けた人生で見つけた宝石。
神様がお与えてくださった奇跡。大切に守るさ。
私が望んでいたものをすべて持っている。
彼女となら、うまくやっていけそう。
根拠はないが確信はある。

後は怖れることなく突き進むだけ。自分の未来は自分で面白く作り上げるのさ。

見上げれば満天の星。二人して歩く前方に浮かびあがる電飾されたマニラホテル。その右上に満月が怪しく輝いている。
潤いのある日々はすぐそこにある。人生のターニング・ポイント。我が最良の日。
隆志は感動した。頬を伝わる涙は心地よく隠そうとも思わなかった。
男はロマンチスト。涙がよく似合う。

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by wakahiroo | 2007-07-31 18:25 | ○マラテ迷宮案内
2007年 07月 29日

Gポイントの酔っ払い

★2007年1月~5月の比国滞在時の出来事です。
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酔っ払った、酔っ払った。
女房と二人で、エンペラドール8杯とフレンチ・フライ。
ご機嫌の佐太郎。
酩酊度7くらいかな。
この瞬間、人生、捨てたもんでもないわい、と感じている。

最近、飲みたくなると、ファウラの「Gポイント」というお店に女房と一緒に行くことが多い。
佐太郎の嗜好に合っている。
女性ボーカルのライブバンドが入っている。
客は、ほとんどが金のなさそうな欧米人。

新宿育ちの佐太郎、場末的雰囲気が大好きだ。
取り澄ましたところは苦手だ。胡散臭い危険の匂いの漂っているところの方が、安らぎを覚えるのだ。

このお店のディープだぜい。
年増度といい、妖怪度といい、かなりの高得点。
限界すれすれのところをついている。スリリング。

この店、常識人には、その良さがわからないだろうな。
なにやらハロハロに似ている。
ゴチャゴチャにいろんなものが詰め込まれていて、ある種の形容しがたいハーモニーを醸し出している。
慣れない人は、口に合わないだろう。拒絶反応ってヤツや。


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酔っ払って咆哮する佐太郎。
気分はライオン丸さ。
酩酊度8に上がっているか。
「ネエチャン、酒もってこい」とか、わけのわからないことをがなり立てているのではない。
多分、70年代80年代の英語のヒット曲を一緒になって歌っているんだ。
なんたって、ジジイの青春の音楽だもんな。
心の中では涙していたりして・・・・
佐太郎って、感傷的で、硝子のハートを持っているんだ。

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ウェートレスは、若くて可愛い子が多い。
フィリピノ語で馬鹿なことを言って、適当にからかっているんさ。女房もあきれ顔。
話をしていると、19歳のアルバイトのこの子も、真面目な子なのが伝わってきた。
孫みたいに可愛いぜ。←といいつつ、鼻の下を伸ばしている。

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足の悪い佐太郎も踊るんだぜ。
もともとジジイ。かっこなんて何にもつけないさ。
女の子達の真ん中に分け入っていって、自己陶酔して踊っている。
あっ、また、ハポン(日本人)の酔っ払いだ、なんて感じだねえ。
時々、欧米系の同類のジジイが現れるけどね。仲間よ。
生きているうちは楽しくいかないとね。
てやんでえ、阿片でも何でも吸引してやろうじゃないか。
佐太郎、ここに錯乱せり!

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帽子は佐太郎のトレード・マーク。
この帽子、2代目なんだ。
1代目は、汚れ過ぎで捨てようかと思っていたとき、コスタルロードでジープから自発的に飛んでいってしまった。

エンペラドール、ロックで1杯、85ペソ(200円ちょい)。
結構。高い。←日本の物価で考えるなよ。
なんたって、エンペラドール1本。ミニストップでは87ペソ、サリサリストアでは64ペソだものなあ。
エンペラドールって、フィリピンのブランディーだ。値段の割りに旨いぜ。
未経験の方がおいでなら、是非試してくれや。効くぜい。胃に滲みるぜい。
とにかくここのロック、原価から計算すると、とっても高~いのだ。
そんなこと言ってたら、お店でなんか、飲めないよな。
気分転換代だわさ。雰囲気を買っているんだ。
帰りは、パジャックで30ペソ。

今度、日本に1本、お土産に持っていこうと思っている。

部屋には、エンペラドールか真露をだいたい置いてある。
だども、あまり飲まない。家で飲んでいてもつまらないんだよな。

・・・・・・・・・・・・
★Gポイントにおける、美についての考察

飲む。踊る。踊る。飲む。酔っ払う。
岡場所的なお店だ。
佐太郎、風俗ライターじゃないからね。
違った視点でこのお店を観察してみる。

佐太郎は新宿育ち。場末的雰囲気が大好きだ。
取り澄ましたところ、セレブっているところは苦手だ。胡散臭い危険の匂いの漂っているところの方が、心休まるのだ。

このお店のディープ度、なかなか。
年増度も妖怪度も限界すれすれのところをついている。スリリングだ。ぞくぞくするぜい。
女房がここなら現役で務まるかと聞く。
一瞬躊躇したものの「ぜ~んぜ~ん、大丈夫」なんて答えていた。ハハハ。
これって、持ち上げたことになるんだよな。

欧米人のお年寄りの好みって、私のような日本人には理解しにくいところがある。
マニアックだ。
発酵、爛熟、崩れ、乱れ、不均衡・・・

欧米人の美意識がおかしいって。そんなこたあ、ないさ。
日本人は、美の基本を欧米系の顔においている。
見ていると、欧米顔した美人には抜きがたい劣等感からかただただ卑屈になっているようだ。
物質文明の先進性を考えるといたし方ないか。
欧米人は、遊ぶとき、妻や恋人と違ったものを求めるんじゃないかな。非日常をね。

佐太郎もどう影響されたのか、このところ嗜好が変わってきたらしい。
だんだんその良さがわかるようになってきた。
この歳になって、やっと芸術性に目覚めてきたのかなあ。
美しい女性の絵より、ピカソの絵画だよな。

整った美形にこだわるようではまだまだだな。
若者なら許そう。
人生の酸いも甘いも噛み分けることのできる年代なら、その青さを笑ってやるぜ。
そんなことないか。
「蓼(タデ)喰う虫も好き好き」って言うものな。
佐太郎、お前、アホやなあ。それを言うなら、「十人十色」やろが。
ん? そんなことないか。おお、日本語は難しい。

アンバランスで崩壊しかっている造作は、飽きもこないし、奥が深い。
美は乱調にあり!だぜい。

この店、常識的な考えしかできないお方は、その良さがわからず逃げ帰るだろうな。
フィリピンのカキ氷、ハロハロに似ている。
ゴチャゴチャにいろんなものが詰め込まれていて、ある種の形容しがたいハーモニーを複雑な味を醸し出している。そこが魅力なんだけど、オツムの固い人、芸術性に目覚めていない人は、肌に合わないよな。

この辺からデル・ピラールにかけてはこの種の女性をピックアップできるお店が何軒かある。
佐太郎、好奇心旺盛だから、それぞれのお店の特徴も心得ている。
でも、ジジイ、風俗ライターじゃないから、あえて無視するよ。

誤解を承知で言うと、プロステチューションもごく普通の日常的営みさ、文化よ。
特別な眼で見ることは何もないさ。
世界最古の職業の一つだそうじゃないか。
吉原抜きでは、江戸庶民文化は語れないんじゃないか。

現実に存在しているのに、ないかのように触れないっていうのもおかしいよな。
ジジイの主義に反する。
ましてや、貞操とかいう幻を信じ込んでいる女性達の偏見なんて、度の入ったサングラスよ。糞くらえさ。

おっと、前言、取り消し。
女房がこわい・・・

by wakahiroo | 2007-07-29 19:20 | ○マラテ迷宮案内
2007年 02月 26日

佐太郎、ネットについて、ついつい考えてしまったのだ。

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ココスのウェートレスのジェーン
昼は大学生。女房に懐いている。
明るくて気が利いて、とても良い子だ。佐太郎、若かったら、モーションをかけたいところだね。
お客も気持ちよく背景になってくれた。人と人の関係、こうありたいね。

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ココス・ネストの風景
週末やもっと夜が更けるとお店は一杯になる。

佐太郎、写真を撮ってクレームをつけられる
ココスで、ジェーンとお店の様子を撮っていると、一人で飲んでいた黒人女性に別のウェートレスが言われたそうだ。
「写真を撮るのを止めさせろ。でないと、やつを殴ってやる」というようなことを。
おお、こわっ。確かにファインダーの一部に入っていたかもしれない。その女性を撮るなんて気持ちはこれっぽっちもなかった。
夜なので、フラッシュを使ったせいもある。
でも、状況を判断せよ。君なんか撮っていないって。
なんかやましいところがあって、過敏に反応したのかな。腹立つことでもあって神経がイラついていたかな。
自意識過剰というか、ギスギスした権利意識というか。
なんだか、腹立たしく思うと同時に哀しくなった。
ココスのウェートレスは。皆友達。適当になだめてくれていた。
女房の方がキレて代弁してくれた。日本語で、聞こえる声で「おまえみたいなブスなんか撮るかよ!」だって。
相手が日本語わかったら大喧嘩になっていたろうな。
ブスだったか魅力的女性だったかは、まったく意識していなかったうえに、闇夜にカラスっつうか(少し差別的言辞かな。やっぱし、腹を
立てているんでさあ)、暗がりに黒い肌、よくわからなかった。
人にはそれぞれ事情がある。なんで、あんなにヒステリックに反応したのかな。
発した言葉から判断するに、少なくともレディではないよな。

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今夜もSML(サン・ミゲール・ライト)を飲んでご機嫌の佐太郎
ココスでSML1本28ペソ(約70円)

ここはフィリピン、皆、ある程度東洋的な謙虚さは持ち合わせているぜ。そんな反応はされたことはない。嫌なときは、せいぜい顔をそむけたり顔をしかめられたりするくらいだな。
お前、アメリカ人かい。お前ら、アメリカーノは、他人(ひと)の国に土足で上がりこんで来て、いつも自分達の正義を振りかざす。
辟易するね。ムカつくね。
アメリカ人は権利意識を前面に出して自己防御しないといけないのかね、ご愁傷さまでえ。

この歳になると、プライバシーの権利意識が強すぎるギスギスした社会に抵抗を感じる。
アジア型のプライバシーの希薄な社会も、それはそれで、心地よい気がするんだよな。
世の中は相対的な約束事でなりたっている。
何かが欠けたら、何かで補完されるのが世の常・・・

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休憩中のジェーン

アメリカ型の権利意識むき出しの訴訟社会が、進んでいる社会とか、望むべき方向だなんて、これっぽっちも思っていない。
いや、むしろプライバシー意識の抑えこまれてはいるがアジア的な寛容の心が下敷きになっている緩い社会の方が、より住み易い高度な社
会なのでは?

とにかく、この一件で、風景としてでも、他人の写真を撮ることについてもう少し考えておく必要があると思った。
その辺のこと、ずっと気にかかっていたんだ。良い契機だ。

人知れずこっそり写真を撮ることと、ネットへの写真掲載の限界について、考えてみたい。
白黒のはっきりつくことではない。まだまだかなりグレー部分の大きい分野だわさ。

予備知識を仕入れる前に、先入観のない真っ白な状態で自分なりの盗撮論とネットへの写真掲載論について、そのうち、述べてみようかな。
後は、既成のものと、すりあわせればいいのさ。
すぐ、大きく出るところが、詐欺師的だって。ハハハ。しゃあないだろう、性格だもの。
大言壮語は佐太郎の持ち味の一つさ。

佐太郎、今のもやもやした気持ちを少しすっきりさせたいだけなんだけどね。


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「ココス・ネスト」の看板と店内の様子
今、この辺りは、長期休暇のヨーロピアンで一杯だ。
隠し撮りを、この若者達にクレーム、つけられたら、佐太郎、グーの音もでないな。
平身低頭、すぐ謝るね。精一杯泣きそうな顔を作ってね。
変わり身の速さは佐太郎の持ち味の一つさ。
でも、何も言われなかったし、にらまれもしなかった。そんなもんだよな。


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「ココス」から、隣りの「エラ」方向を撮る
境目がよくわからない。

 盗撮は文化だ! 
己の下半身の無節操さを「不倫は文化だ」と開き直った靴下をはかないで靴をはく芸能人がいた。なんだか似た心境のようである。
「盗撮、盗み撮り=犯罪」ってイメージが一般的だ。この言葉の語感が持つほど、盗撮って悪いことなのかなと前から思ってはいた。
少しでもこの言葉のマイナスのイメージを払拭して、そのプラスの部分、おそらくは創造性につながる部分、をクローズ・アップして
みたい。少しでも盗撮という言葉のイメージの復権ができればうれしい。

盗撮って、どういう行為を指すのだろう。
「相手の許可を得ずに、相手に気づかれずに人をこっそりと撮影すること」か。
そうだとしたら、繁華街やコンビニの監視カメラも、マンションの防犯カメラも、現金引き出し機のカメラも、皆、盗撮になってしまうよな。
盗撮すべてが犯罪だったら、犯罪を防ぐための防犯カメラが犯罪になり洒落にもならない。
これらのカメラの映像、隠し撮りとは言っても、盗撮とは言わないよな。
よって、この定義、無理がありそうだ。
隠し撮りでもその撮影目的によっては、盗撮と呼ばないようだ。
じゃあ、私のように、ネットに載せるこれはという写真を趣味で無許可で撮ることはどうなんだ。盗撮か否か。
これを盗撮と呼ぶようなら、私は、あえて盗撮者と呼ばれる道を真正面から行くしかない。

一般的に盗撮と呼ばれる決め手になるものは何なのだ。
何を撮るかか、撮影者の心の持ちようか。そして、その犯罪性との関連は?

撮ってはいけないものを撮ったら盗撮としよう。
下半身に人格はないを地でいった、ナントカ(植草先生だったっけ)教授のように、女子高生のスカートの下を盗み撮ったりするのはわかり
易い。浴場の女性の裸の姿や、他人の家の中の下着姿の女性を隠し撮りしたりしたらしたら。明らかに犯罪で、盗撮と言えるよな。これ
は、写真を撮ること以前に、その行為に犯罪性がある。写真を撮ることと切り離して考えた方が良い。
盗撮という言葉のイメージは、不幸にもこの辺の行為と強く結びついてしまっている。
でも、公園で遊ぶ家族連れの楽しそうなほほえましい様子をこっそり撮ったとしたらどうなんだ。撮ってはいけないものか。
それだけでは、犯罪性はほとんどない気がするが・・・・・
撮ってはいけないものの線引きが難しいよな。

盗み撮りに犯罪性があるとしたら、どういう場合か。
撮られる側に不快感を与えたらか。それとも、撮る側に卑猥な心や悪意が存在するかか。
そんな主観的なもの、法律的に無意味だよな、多分。
じゃあ、やはり隣りのテーブルの女の子が食事する姿を隠し撮りしたら?犯罪性はあるのかい。
佐太郎、パンチラなんかより、美しい女性がバリバリもの喰う姿にそそられるんだけどなあ。
下品なることも佐太郎の持ち味の一つさ。

いずれにせよ、盗み撮り、隠し撮りそれ自体は、道義上は問題があっても犯罪性がないと結論せざるを得ないんじゃないかな。
私のこの結論、どうですか。法律面に詳しい貴方?無理ですか。

盗撮という言葉には、手垢がつきすぎてしまった。そういうときは、新しい言葉を使い、新しいイメージを盛り込む必要がある。
新しい言葉、何があるかな。
隠し撮り、密撮、秘撮、隠撮、どれもこれも今一つだな。
英語では、盗み撮りを、sneak shot と言うらしい。いっそ、カタカナ英語をそのまま用いて、スニーク・ショットでいいか。
英語の語感は悪そうだが、日本語にすると、まだ手垢がついていないだろ。
だから、こっそり写真を撮る人をスニーカーと呼ぶのはどうだろう。軽快な感じがするじゃん。
靴のスニーカーと語源は一緒さ。あちらは、「そっと歩く人」らしいね。
佐太郎は胸を張って言う。
佐太郎は、盗撮者じゃない。今日からスニーカーさ。


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我がコンパウンドの入り口のドアを開けるととこんな景色が目に飛び込む。
異界に通じる不思議のドアさ。
こんな写真は、風景と同じで全く問題ないよな。

スニーク・ショットを撮る際の私なりのガイド・ラインを作っておけば、撮影の際、あれこれ迷ったり、躊躇したりしないですむよな。

◎佐太郎の撮影上のマナーとしての自己規制
・明らかに、相手が嫌がる状況では撮らない。
・ある人物に焦点をあわせて撮るときは。原則として許可をもらう。
・人物以外の建物などの物、動物などは、公共物、私有物に関わらず、撮影することに関しては変に気をまわさないで、どんどん撮る。
物には感情がないものな。軍事施設や、撮影禁止の表示があるときは、もちろん、考える。

プロの報道カメラマン、社会派のカメラマンだって、被写体に意識されたら、良い写真は撮れないよな。プロ意識に徹すれば、無理して撮らなければならない場面はいくらでもあるんだろう。
佐太郎なんか、撮られているとわかったら、風景なんかにならない。思いっきり、変な顔を作って自己アッピールするんや。嫌なタイプだろう。

佐太郎、アマチュアだけれども、ユーモアあふれる写真とか、場の雰囲気がひしと伝わってくる臨場感ある写真とか、叙情性に満ちた一編の詩のような写真とか、何かしら人の心に残るような温かい写真を撮ることができれば、と夢みている。
そのためには、時には悪魔に魂を売り渡してもいいかも・・・
腕はアマチュアなれども、心はプロフェショナルよ。
せいぜい、パパラッチ、いや、ジジラッチ佐太郎と言われないように気をつけるよ。

なぬ、死に損ないのジジイが欲張りだって。アホンダラ! 死に損ないだから、できることもあるんじゃい。
火事場の馬鹿力じゃなく、死に損ないのアホヂカラをナメたらあかんぜ。

イエース、スニーク・ショットはカルチャーなんでさあ。

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目立ちたがり屋を通り越して、ネット露出狂の佐太郎
ナックピルの路上。深夜12時頃、近くのライブ・スポットに行く途中。
全く飲んでいない。
周りのフィリピン人に受けていた。馬鹿は受けると調子に乗る。

佐太郎、信じてもらえないかと思うけど、20代前半はどちらかというと引っ込み思案の恥ずかしがり屋だったんだぜ。好きな女の
子に告白もなかなかできず、忍ぶ恋で甘んじていた。
今でいうフリーターのときだった。
芝居を志していた新宿の飲み仲間に誘われて、女子の美術大学でデッサンのモデルをやったんだ。
悪友は、舞台度胸をつけるというもっともな目的があったが、佐太郎は普通のバイトより少しお金が良いというそれだけの理由だった。
あの頃は、とにかく早く旅に出たくて仕事は選ばなかったな。
顔の方はともかく、ずっと肉体労働をしていたので身体はそれなりに自信はあった。
ところが、佐太郎の隠れていた露出趣味に火がついたんだ。見られるのが快感になっっていったんだ。
人生の転機なんて、いつ来るかわからない。思わぬところで、己の嗜好や才能に気がつくもんさ。
佐太郎が出たがり屋になったのにはこんなお粗末な履歴があるんでさあ。


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佐太郎のカアチャン。ライブ・ハウス「ABA」で。
こちら様には掲載許可はもらっているかって。
あへっ、もらってないか。
かまへん、かまへん。私と同じくらい、出たがりなんや。
この辺は、典型的似たもの夫婦さ。
概して、フィリピン女性って、自己主張が強く、でしゃばり。
あんりゃ、悪口になっている。いんや、被害者意識からくる愚痴さ。


 プライバシーなど、糞食らえと言いたいところだが・・・・
佐太郎、写真を撮ることではかなりの自由奔放派だ。ネットに掲載する段でも、自由奔放派といきたいところだが、それが一転、建前は慎重派になってしまうんだよな。
佐太郎、こう見えても、根は意外と常識人なんだ。

他人の写真をネットに載せることに関しては、その人のプライバシーの意識のスタンスによって、かなり考え方に差があるようだ。
許可のない写真は絶対に駄目だと頑なに考える人、本人に迷惑がかからないならいいのではと軽く考える人。
家などの他人の財物を載せるのもためらう人。

A.撮られた人の許可がなければ、写真掲載は一切まかりならん、という極論(写真掲載消極派)
B.撮られた人に実害が及ばなければ掲載してもいいのではというもう一方の極論(写真掲載積極派)
実際には、この間のどこかで妥協点を見つけることになるのだろう。

Aの方は、風景や背景に写った人、皆から許可を得るなんてことは実際に不可能だ。被写体として撮影の許可をもらった人でも、連絡をつける
のが、不可能な場合もある。場合によっては許可した許可しないの水かけ論になってしまう。
それ以上に、Aの立場は、インターネット、ブログの創造性、可能性を奪うことになるだろう。
一方、Bの場合も野放しにすると、プライバシーの侵害という面から由々しき問題を引き起こしそうだ。
佐太郎はできうるのなら、Bの立場で行きたいところだが・・・・
法律家の考える基準と、実際に私達のようにネットを愉しむ者の基準には、大きな隔たりがありそうだ。
佐太郎、実学は嫌いじゃけん。法律のことはよくわからん。

生まれ変わったら、上方芸人になることに決めている佐太郎、写真を掲載する以上は「受け」を狙いたい。受ける写真は、多分に本人が嫌がるものが多いかもしれない。その辺がジレンマだよな。
佐太郎、欲望には、弱いんだ。面白い写真が撮れたら、お蔵にする自制心などないな。なんだかんだ考えながら掲載しちゃうタイプんだよな。
とにかく、後は問題が起こったら、その都度、対応するわあな。
佐太郎の場合、フィリピン人、フィリピンの写真を日本語のブログ等に掲載することが多く、その点、助かっている。
写真許可をもらう際、「ネットに載っけるかもしれないよ」と一言、添えるようにはしているけどさ。
もらえそうもないときは黙っている。

佐太郎、お前、ずるい。ガードが緩いって?
わかっているって。佐太郎、緩いのが好みや。
おうよ、カタイ女より、貞操観念のユルイ女が好きなんよ(←アホ)。

◎佐太郎の写真掲載上のマナーとしての自己規制
・写真を掲載するとき、十分に相手の立場を考えて、問題を引き起こしそうなものは掲載しない。(守れるかな?)
・相手からクレームがついたら、すぐ写真を削除する。
・不運にも実害を与えた場合は、誠意をもって対応する。(のつもり)

こんなとこで、いくでよ。
おまえ、そりゃあ、いい加減でひどすぎるって?

じゃかしい。そんじゃ、おまえのガイドライン、示せよ!
なにかい。他人の意見は批判するけど、己の意見は言わないって。
そりゃ、また、ご都合の良い主義で。

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旧正月は、爆竹が炸裂して、うるさいのなんのって。
なんだかいかがわしいディスコ「コヨーテ」の前。
ここのオーナー、中国系の人なのかな。

いろいろな考え方感じ方の人がいるとは頭でわかっている。だども、初対面のオッサンに「私はネットでの顔出しNGですよ」などと真面目
な顔で牽制球を送られると、目立ちがり屋の私は鼻白んでしまう。ああ、この人とは、多分、良いお友達になれないなと感じる。向こうも、
お前みたいな破廉恥漢、願い下げだよとくるか。お互い様だよな。
女性なら、まだわかる。いい歳をしたオッサンがインターネットで顔出しをしぶるのは何故なのだろう。結構、多いんだ。
その理由を思いつく限り考えてみた。
○後ろめたい過去がある。
フィリピンに多いと言われるWANTEDのお方は顔を出すわけないよな。そこまで行かなくとも、人に恨まれるようなことをしてきた方
は遠慮なさるよな。
○インターネット自体、よくわかっていない。知らないものには近寄るとロクなことがないという経験則にしたがって避ける。
○自分のことを知られると、仕事上、不利益につながると信じ込んでいる。
こちとら、隠居人よ、そんなこったあ、知ったこっちゃない。利益につながる場合もありそうだけどね。
というか、自分の情報は他人に一切漏らさず、他人の情報だけは手に入れようという、姑息なで小賢しいタイプ。
黒幕のつもりでいるそういう人間って、見る人が見れば、すぐわかるんだよな。
いわゆるエリートという奴と商売人には都合のいい秘密主義者が多いんだよな。
○極めて恥ずかしがり屋というか、ネットのひきこもり、自閉症
知っている人に見られると、世間体がどうの、体裁が悪いなどと考えてしまう。小さい、小さいって。普段から、知られて困るようなこと
やっているかね。佐太郎は、天地神明に誓って人に知られて困るようなことはしていないで。女房にだけは知られて困ることが少々あるけどね。
逆鱗に触れたら、怖いのなんのって・・・
○顔を出すなんてはしたない。今まで、謹厳実直に勤めてあげてきた人間、営利追及のためだけに血道をあげてきた人間として、そんな遊びに顔を出すなんてえ、プライドが許さない。
歳を取ったらね。子供にかえるんだって。佐太郎は、今、中学生の悪ガキの心よ。
○顔出しすると危害を加えられるのでは被害妄想の塊となっている。
ジジイの佐太郎、これだけ、顔を出しているけど、危害を加えられたことなどないぜ。
可愛い女の子に夜道で襲われないかと、期待はしているんだけどね。


思いついたのはこんなところよ。想像力が貧困だって?
ともかく、私はネット顔出しNGの人の写真は載せない。目の部分を黒い四角でぬりつぶすような手段も取りたくない。写真、そのものを載せない。他に載せたい写真くらい、いくらでもあるんだから。

オッサン諸氏よ、ネット自閉症を克服し、顔を出せって。

by wakahiroo | 2007-02-26 19:26 | ○マラテ迷宮案内
2007年 02月 02日

カリンデリア通りとセント・ポール・ユニバシティ


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ジェネラル・マルバールとペドロ・ヒルの交差点にあるカリンデリア
マリア・オロッサ・ストリートのジェネラル・マルバールからペドロ・ヒルまでは、片側はセント・ポール・ユニバシティの校舎、もう一方の側は断続的に6軒のカリンデリア(訳すと大衆食堂かな)が並んでんでいて、お昼時は学生達などで混雑している。
この近くには学校がたくさんあるようだ。佐太郎はここをカリンデリア通り(←あくまでも私だけの呼称)と呼んでいる。
私達はマルバールから近い3軒をよく使っている。歩いて2、3分で行ける。

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カリンデリア内部フィリピノ語がわからなくても、オカズを指差して注文できる。
セルフ・サービスが基本。ご飯を注文し、フォークとスプーンとコップをテーブルまで持っていく。
足の悪い私には、気がつけば運んでくれる。
向かいにきれいな女子学生が座ったときなど、気持ちよ~く、食事できるんだよな。ハハハ。

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ジェネラル・マルバールから2軒目のカリンデリア
あるカリンデリアへ入って、ご飯が冷たかったりしておいしくないと、女房は、他のカリンデリアへ行って、ご飯をビニールで買って
きてそれを皿にあけて平気で食べる。外のベンダーから買った果物なども自由に食べる。な~るほど、国が変れば慣習も違うんだ!!
だから、フィリピンの政治・文化等も日本の価値観で安直に判断するのも、よ~く考えないとね。
一面だけを切り取って独断的に解釈するっていうのは危険だよな。

フィリピンでは、食事をしながら、コーラやスプライトなどの炭酸飲料を飲む人が多い。
これだけはついていけない。
そうさ、味覚も違うのさ。
でもさ、これ、健康に良くないって!!
太るぜ。見ているだけで、なんだか気色悪いんだよなあ。止めようよ。
 ↑佐太郎、お前、文化の違いに少しも寛容じゃないじゃないか。
皆さん、大きいこと、言って、ゴメン。


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ジェネラル・マルバールから3軒目のカリンデリア
女房が一番好んでいるお店。ビコール味なのだそうだ。確かにおいしい。私の舌にもあっている。
必然的にここに行くことが一番多い。
働いている少年達もビコールの田舎から働きに来ている。
女房はもう顔なじみで、従業員に「アテ(姉さん)、アテ」とか「アテ マーリン」とか呼ばれている。
アサワ(夫)の私もすぐ覚えてくれて、一人で行っても、優しく気を使ってくれる。

このお店、タクシーの運転手さんが食べにくる。
日本でもタクシーの運転手さんがいくところは、安くておいしいところが多いよな。


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このマリア・オロッサ・ストリートは、車の交通量が比較的に少ない。静かな雰囲気がして落ち着く。
右側は、セントポール・ユニバシティの校舎が連なっている。
このまま、まっすぐいけば、ロビンソン・プレイスのペドロ・ヒル口に突き当たる。


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私の最高に好きな組み合わせの一つ。
シニガン・ナ・ヒポン(海老のシニガン・スープ)とアドボン・プシット(イカのアドボ)
私は基本的にフィリピンの肉料理は苦手だ。脂っぽすぎるんだ。
その代わり、魚系だと全く問題ない。カニン(ごはん)がどんどんすすむ。

オカズはだいたい一皿30ペソから35ペソ。ご飯は一皿7ペソくらい。
100ペソ(250円くらい)もあれば、満腹できる。


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この組み合わせも、抵抗なく食べられる。
ツナを甘酸っぱく煮たもの(エスカベッチョと言うそうだ)、オムレツ(ひき肉が入っている)、アンパラヤ(ゴーヤ)の炒めもの。
左上の黄色いものは食べ物ではない。ロウソク。何のために置かれているか、知ってるかい。
食事の前のお祈りに使う。 ブー。
ロマンチックな雰囲気を楽しむ。 ブー。お昼で大衆食堂だぜ。
ハエやカなどの虫除け。 ピンポーン。


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ペドロ・ヒルストリートに面したセント・ポール・ユニバシティ・マニラの正門。
セント・ポールと言えば、日本では立教のことだよな。
池袋の立教通りに思い入れのある、昔、よく通った懐かしい飲み屋があるんだ(←名前も忘れてしまっている)。
今度、行ってみようかな。
もうなくなっているかもな。
まだ存在していて芝居をやっていたママが元気だったら、感動ものだよな。


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ロビンソン・プレースを背にして、ペドロ・ヒルからマリア・オロッサ・ストリートを撮る。
ここからジェネラル・マルバールまでの左側一画がセント・ポール・ユニバシティのキャンパス。
150メートルくらい先のナックピルを右に折れてすぐのところに佐太郎の住居がある。
つまり、佐太郎の住まいからロビンソンまで歩いて5分くらいかな。
もっとも、よたよた歩きの佐太郎が歩くと、もっと時間がかかるが・・・
女房は、暑すぎると、ロビンソンまで涼をとりに行くんさ。
寒さに弱い片麻痺の佐太郎はクーラーが敵なのさ。ごめんね、カアチャン。


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朝の散策中、ペドロ・ヒルストリートを行進する美女群に遭遇。
女性の方に目が奪われて、垂れ幕を見逃し、何のラリーかとうとうわからなかった。
興行ビザをよこせなんていうデモでなかったことは確かだ。
よく見たら、お揃いのTシャツを着ている。
キリスト教関係の何かのようだな。

ええい、こうなったら、太っ腹よ。
好きな子、持ってきな!
どの子が良い?
指名料4000ペソ(1万円)だよ。←フィリピンの若い女性は皆ホステスだと思い込んでいるアホな日本人も多いんで、ちょっとしたブラック・ユーモア。
高いって?
冗談じゃない。正真正銘の学生やで。それも良家の子女。

ただ、何にでも難点はある。
家事は、メイドまかせなので、まったくできないよ。
プライドが高く、わがままで、お金もかかるで。
マゾっけのある貴方になら、最高の素材とちゃうか。敵はハードル、高いぜ。
頭も良いから、せいぜい教養磨いとけや。

美しくてうっとりしてしまいそうな女性もいれば、それなりの女性もいる。
いろんな人がいて、世の中、うまくバランスがとれるのさ。
外面だけを偏重すると、手ひどいしっぺ返しも受けるしね・・・・
とかく、人と人の関係って、興味がつきない。

この子達、このままペドロ・ヒルを直進し、ロビンソンを過ぎたあたりで右に折れて、校門をくぐるはず。
名門セント・ポール・ユニバシティの学生達じゃった。


by wakahiroo | 2007-02-02 19:17 | ○マラテ迷宮案内
2006年 11月 10日

バクラ的生き方──ノエルの場合

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バクラとは、フィリピノ語でオカマのことだ。
バーガーマシンの店長的存在ノエル、24歳。バクラ(オカマ)が入っている。
声が甲高く、フィリピノ語なのでよくわからないが、多分、オネエ言葉的なものを使っているのだと思う。立ち居振る舞いは女性的。
でも、頭の回転が早く、客の心をつかむのが上手だ。
向学心も強く、日本語を独学していた。
ノエルのいるところは笑いが絶えない。
一緒に話していると心が癒される感じがする。
社会的弱者は人の心の痛みがわかるのかな。

ラディースとは、姉妹(断じて兄弟ではない)のように仲が良い。
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フィリピンは日本より、はるかにバクラは社会的に許容されている。
そういう面では、フィリピンは日本より進んでいる。
(フィリピンは日本より文化的に遅れていると信じ込んでいる単細胞の人たちも多いので、あえて言っておくぜ)
少数派には優しい寛容な社会だ。
だから、ノエルも自分が、バクラ的であることを隠しはしない。

オカマという言葉は、新宿2丁目も行動範囲にしていた佐太郎にとっては、嫌なマイナスのイメージを持った言葉だ。女装をして、「カマをほる」という、つまり、アナル・セックスで己の性を売る女(?)、あるいは、オカマバーに出て、女の心を持った男として媚を売るホステス(?)という商売の影を連想させるのだ。顔見知りはかなりいたけど、距離をおいて友達というほどの付き合いはしなかった。
でも、一般的には、少し差別のニュアンスを含めて、女の心を持ち、女性的立ち居振る舞いをする男というくらいの漠然とした意味で使っている場合が多いのかな。
かといって、「性同一性障害」という言葉も好きではない。この言葉は、身体的に男性なのに性自認が女性である(もちろん、逆もある)人達を精神病ととらえているんだよな。
この人達、決して精神病じゃないって。

厳密には「フィリピノ語のバクラ=日本語のオカマ」でないことも確かだ。
言葉というのは、その言葉の使われる文化の中でその意味が存立するんだよな。
「バクラ」は「オカマ」より、緩やかな優しい意味合いを持った言葉のような気がする。
バクラという言葉一つからでも日比文化比較論が展開できそうだな。

ノエルは、同じビサヤ出身ということもあって、私よりもむしろ女房と親しい。
でも、ノエルと付き合うようになって、バクラ的生き方というものをある程度理解できるようになった。
そして、バクラの人達を意地悪な眼を持って特別視することもなくなった。
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あたし、バクラなのよ。
女の子とは良いお友達にはなれるけど、少しも心がときめかないの。
あたし、仕事の営業成績は良く、会社から信用されているのよ。
でも、仕事中、女の服装をするわけにはいかないのよねえ。
あたし、ビサヤのマンドゥリケ島出身よ。
若い頃は、スカートをはいて、男の子とよく踊りにいったのよ。
最近、悩んでいるのよ。
わかっているわ。
あたしももう歳だし、女の心を封印して、将来のために、仕事に専念しなければならないって。

難しく説明すると「社会適応性の向上のために自己の性自認とは異なった性役割を意図的に選択する」ということかな。

でも、女を捨てて男として生きるのって自分を押し殺して生きるってことなのよ。
つらいのよ。ストレスがたまるのよ。

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性同一性障害(Gender Identity Disorder)について、少し学習しておこうか。
身体的には男性であるが性自認が女性であるケースをMtF-GIDと呼ぶ。 MtFは、Male to Femaleの略。その逆はFtM-GID。日本では「おなべ」なんて言っているよな。

性同一性障害者も一般の男女と同じく、自分の心理的性別に相応しい服装を好み、自分の心理的性別と反対の性を恋愛対象とすることが多い。そのため、身体的性別を基準にして観察すると「異性装を好み」「同性を恋愛対象とする」ように見える。
混同されがちであるが、性同一性障害と同性愛や異性装とは、全く独立した別個の現象なのだ。←ここは重要。
オカマとホモは違うんだよ。もちろん、一致する場合もあるけど。
上の写真の左端に写っている男性は、正真正銘の同性愛者、ホモだ。
アドリアティコのこの辺り、オカマだけじゃなくホモも多いんだぜ。

性同一性障害の原因は現在のところは不明である。
先天説、後天説、その折衷説、いろいろあるが、最近は「性自認の決定は何らかの生まれつきの差異に拠っている」という説が有力視されるようになっている。
だから、親の育て方が悪いから性同一性障害になるなんていうのは全くの偏見に過ぎないよな。
ノエルのお母さんと弟の写真を見せてもらったが、とても感じのいい人達で、温かい家庭にそだったんだなあと伝わってきた。
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付き合っているわけでも、恋人でもなんでもない。ただの友達。
バクラの特権なのか。バクラって、並みの男からみると、なんだかとても羨ましい面もあるんだよな。
女の子が何の警戒心もなく、近寄ってくる、触ってくる。

女の子にも、際どいエッチな話を平気でする。
女の子は、嫌がりもせず、逆にケタケタ笑っている。

ノエルは冗談が大好きだ。
チャンスがあれば、下ネタの冗談で客をからかう。

夜11時過ぎ、女房とバーガーマシンのカウンターで油を売っていた。
30代のまともな感じの日本人の男が若い可愛い女の子を連れて向かいのカウンターに座った。
チリ・バーガーとペプシ・コーラをオーダーする。
ノエルは、商売熱心。始めて客には必ず声をかける。
チリ・バーガーが出来上がり、客がパクつきはじめたとき、
 「ドウ ユー ライク ホット ペッペエー?」
 「イエス、 アイ ライク ホット ペッパー. イッツ スパイシー.イッツ デリシャス」
ノエル、にやにやしながら、もう一度
 「ドウ ユー ライク ホット ペッペエー?」
 「イエス、 アイ ライク イット ソー マッチ」
ここで、連れの女性が、こらえ切れず笑い出す。
男の客も私もどうしてなのか、わからない。
女房の説明によると、ペッペエーとは、フィリピノ語で、日本語のオチンチンに対応する、女性のそれを指す可愛らしい表現なのだそうだ。
件の客も、連れの女性にその意味を耳打ちされ、理解する。
ノエル、追い討ちをかける。
 「ドウ ユー ライク ホット ペッペエー?」
客は苦笑しながら、連れに目配せをして
 「イエス、 アイ ライク ホット ペッペエー ベリー マッチ」

こんな会話で客との心理的壁を取り払うんだよな、ノエルは。

ご免。エッチな話をしちゃって。
でも、ノエルって、清純そうな女の子にも、お構いなしで、こんな調子だ。
そして、皆、結構、喜んでいる。
佐太郎がやったら、完全にセクハラだぜ。
冷たい視線で、洟をかんだテッシュでも投げられるな。
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by wakahiroo | 2006-11-10 08:57 | ○マラテ迷宮案内
2006年 11月 06日

路上ディスコ

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バーガーマシンの24歳のノエルは、仕事が暇なとき、お店の車の外に出て、「ココス」の音楽に合わせて妙に艶かしく踊りだす。
リズム感あり、ユーモアあり、バクラ特有の不思議な動き。
19歳のカリンも付き合っている。カリンは近くのディスコの常連。上手い。様になっている。
名づけて、路上ディスコ「バーガーマシン」
入場無料だぜ。

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11歳のラディースも乗っている。
職場の前がディスコさ。

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楽しそうだろう。
実は、61歳の足の悪い酔狂なジジイもちょっと付き合っていたみたいだけど、今ひとつ、無理があったな。


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女房と二人でビールを飲みながら眺めていた。
仲良いだろう。

by wakahiroo | 2006-11-06 08:04 | ○マラテ迷宮案内
2006年 10月 28日

面白くて軽い男

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ココスのボーイ、ロミオは、地元マラテ出身の26歳。昔、かなり遊んだ口らしい。
とても面白いキャラの持ち主である。
見ていると、踊りながら巧みな口上で客をテーブルに誘導する。
こういう仕事って、元遊び人の方が向いているのかな。
軽さだけが信条の調子の良い憎めない男。日本の盛り場にもいる、いる。
結構もてるんだよな。
面白いから女達もついつい惹かれる。
軽さではメシは食えないから、女達は次々逃げていく。
ロミオもその典型。
結婚はしたことがないが、ロミオには二人の子がいる。
最初の子は、2歳の女の子。女性は、ロミオに愛想をつかし、子を連れてアメリカ兵のもとに走ったんだと。
早い話がロミオ、捨てられたのさ。
先日、その女がアメリカに行くというので、子供を見せにココスまできていた。
結構、未練ありげにも見えた。
そして、落ち着いたら、アメリカに呼んでもらう約束をしたんだと。
軽いだろ。何を考えているんだろな、この男。
今度はアメリカ兵の方が捨てられるのかな。
実現したりして・・・・

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「二人の子がいる」とさっき表現したけど、これはロミオの言葉を借りただけで、正確な表現でないかもしれない。
二人目は、新しい彼女のお腹にいるのだ。12月に出産予定なんだと。
佐太郎、柄にもなく、アドバイスをしちゃった。
「ロミオ、アメリカに行くなどと夢のようなことを考えないで、今いるジュリエットをまずは大切にしろよ!」
これって、ロミオ的な生き方と相反するよな。余計なお世話だったかな。
でも、ロミオ、殊勝なことを言っていた。
生まれてくる子の為にも、今のお店でしっかり働くんだと。
果たして・・・

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車道にせり出したテーブルと客引きをしているロミオ
後ろの席でオレンジ色の服を着ているのが女房。

腰が低くて、世話好きで、良い奴だ。
多分、浅いつきあいでは、なんて条件がつくかも知れないが。

日本からもっていったワインをココスのテーブルでみんなで飲もうとした。
栓抜きがない。と、ロミオ、やおら、ボトルを持って、斜め前のビルに駆け込み、栓をぬいてきた。さすが、地元出身の遊び人。顔が広い。
知っていると、便利で、結構結頼りになるぜ。

by wakahiroo | 2006-10-28 08:48 | ○マラテ迷宮案内
2006年 10月 26日

煙草を売る少女

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    ・・・・・・ラディース・・・・・・
  雨季。アドリアティコの街角。
  降り注ぐ雨。
  11歳の少女。
  黄ばんで縮んだ時間と空間。
  ここが彼女の小宇宙。

  母と二人で守ってきた城。
  人情と虚飾の世事を見て聞いて学んだ教室。
  小銭と交換に1本2ペソの煙草を渡す。
  何も考えない。
  勝手に手が動く。勝手に口が動く。

  ネオンとヘッドライトの交錯する深夜の海。
  少女は波間を漂う夜光虫
  眠らない街で青白い燐光を発しつづける。
  いっそう凛と目が冴える。夜半の日常を記憶する。
  少女は世俗の海鳴りを聞いて育った夜光虫。

  大人たちはあたしを子供だと思って優しくする。かまってくれる。
  甘くみないでよ。
  あたし、あんたなんかより、ずっと世の中、知っててよ。
  おじさんの扱いなんて手馴れたもの。
  かまって遊んでやっているのは私の方よ。

  でも、なんだろう、この心のときめき。身体のほてり。
  女になりかけているのかな。
  女になんかなりたくない。面倒くさそうだもの。
  感じの良いお兄さんに手紙を渡して、母さんに叱られた。
  ラブレターは早すぎるって、あたしをなじるの。
  両肩を出した服を着てみたら、母さんに叱られた。
  男の気をひく挑発的な服装だって、あたしをなじるの。
  そんなつもり、なかったのに。

  母さんが言う。
  ふしだらな女になるなと。
  でも、なんだか自信がないの。
  とんでもない女になりそうな気がするの。
  だって、あたし、野心家なんだもの。
  平凡な女で終わりたくないの。

  透明な時間と空間。
  不安な心。
  降り注ぐ雨。
  容赦なく時が流れる。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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ラディース、11歳。佐太郎の最年少のアドリアティコの友達。
私達のアパートからアドリアティコの通りに出るところにあるバーガー・マシンの横でいつもバラ売りのタバコを売っているおばさんの娘。
本名は、ラディースアンという長ったらしい名だ。
母親も女房もラディースと呼んでいる。私もラディースと呼ぶようになった。
ラディースは、私のことをロロ(フィリピノ語でお爺さんという意味)と呼ぶ。
この辺りの若い子の間では、私は日本のロロで通っているんだぜ。
ところで、ラディースの後ろで煙草をふかしている女性。正確には女性とは言えないか。バクラ(オカマ)なんだ。結構、魅力的なんだぜ。じっと見られるとドキッとするぜ。

女房がこの界隈で最初に仲良くなったのは、ここの煙草売りののおばさんだ。
女房のチスミス(おしゃべり)の相手で、かつ、重要な情報源。

ラディースとおばさんは交代でタバコを売っている。
いつものシフトだと、お昼から夕方にかけては、おばさん。
学校から帰ってきてから、10時ごろまでは、ラディース。
それ以降は、また、おばさん。
ラディースが煙草を売っている間、おばさんは遊んでいるわけではない。夕食の用意等、家の用事をしている。働き者だ。
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蛍の光、窓の雪ではなく、バーガーマシンの明かりで勉強するラディース。
バーガーマシンのカウンターやテーブル席で、時には、煙草を売りながらも、宿題をやっている。良い子だ。
二宮金次郎みたいな子だろう。
親子は1分くらいの距離のところにあるアパートに住んでいる。
でも、ラディースは一人ぼっちで部屋にいるのが嫌いなようで、いつも母親のそばにいる。

学力はというと、うーん・・・
一度、何を勉強しているか、見てみたが、一次関数のグラフがあまり理解できていないみたいだった。
MATHが苦手なんだって・・・
塾通いしている同年代の日本の女の子みたいにいかないべさ。
なんたって、学校から帰ってから、毎日働いているんだもんな。
でも、大学にいくという夢を女房には語っていたそうだ。
応援したくなるよね。
タガログ語を教えてくれるかわりにMATHを教えてあげるという交換教授の約束をした。が、頭が呆けてきて根気を失った私。何時のまにか、うやむやになってしまった。
始めから予想はついていたことだけどね。
ごめんな、ラディース。

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 「母さん、いつも私を怒るけど、本当は私を頼りにしているのよ」
本当は貰い子なんだそうだ。
一卵性親子のように仲が良い。
母親にしょっちゅう怒られてふくれているが、それも兄弟喧嘩みたいなもの。
二人を見ていると、親子の絆って、血の繫がりだけじゃないってことがよくわかる。

気さくなおばさんと妹みたいな女の子。
男達は束の間の休息と癒しを求めて、紫煙をくゆらせていく。

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「ロロ~、お休みなさい」
私がアパートに帰るとき、教えた日本語で挨拶してくれる。
可愛い。

機嫌が良いときは、前を通ると「ロロ~、ロロ~」とちょっと甘えた感じでいつも声をかけてくる。
でも、気分が乗らないと、こちらが声をかけても、ニコリともせず無視する。
媚を売ったり、突き放したりしてこちらを翻弄する。もういっぱしの女さ。
とかく、女という生き物は手が焼けるよなあ。
この歳になってし~みじみ~感じるよ。
女はこわい! ハハハ。

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 「学校も、ちゃんと行っているのよ」
ラディース、今日は8時頃学校から帰ってきた。
その制服姿をパチリ。
近くの私立に通っていたが、父親が亡くなってから経済的な理由で遠くの公立に転校したのだそうだ。
父親は中東に出稼ぎ中に脳梗塞で亡くなった。
現在は、そのわずかなペンションと煙草売りの収入で親子二人、つつましく暮らしている。

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 「私、部屋よりここにいる方が楽しいの」
ビールを飲んで眠くなり、早めに帰って寝た。
深夜2時、起き出してバーガーマシンの前の所定の位置にいくと、ラディース、まだ起きている。
明日、学校が休みなのだそうだ。


12時がまわっても、こうして顔なじみのお兄さん、お姉さんやおじさん達とだべったりじゃれあったりしている。
知り合いがまわりに大勢いるので、危ないことはなにもない。

子供の時間はとっくに過ぎている。
日本なら、完全に補導の対象だな。
でも、池袋や渋谷で遊びまわっている子と、一緒にしちゃ、可哀想だよな 。

写真の皆、私の友達だ。
後ろの二人は、ロナルドさんとフィリックス。
前の若い男の子は、名前を忘れてしまった。
バンドマンで、東京の錦糸町に仕事に行くかもしれないと言っていた。
来ていたら、電話、かかってくる筈なんだけど・・・
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「アテ、大きくなったら、日本人紹介してね」
ラディース、女房にそう言った。
アテというのはお姉さんという意味だが、年上の女性を呼ぶときの敬称と用いる。
今のところ、日本人、いたく評判が良い。若い日本人はフィリピーナの憧れの的だ。
この前、ココスにきた、英語を流暢に話す日本の学生、地元のかわいい女子学生達にモテモテだった。逆ナンされていた。羨ましい!腹立たしい!
女房、「ラディース、10年後、20年後の日本、どうなっているかわからないよ。日本人、お金持ちに見えるけど、日本では、皆、一生懸命必死に生活しているんだよ。本当のお金持ちはあまりフィリピンには来ないよ。そんなことを考えるより、今はしっかり学校の勉強しなさい」
と正論を吐いていた。よく言うよ。
30年も日本で暮らすと、女房の頭の中はすっかり日本化してしまった。フィリピン社会の欠点を私なんかより鋭く指摘し、批判するんだぜ。
おいおい、お前の国だろう。もっと、温かくみろよ。
佐太郎って、結構、良い奴だろ。
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勉強途中に寝ちゃったラディース
この服だったかな。
「男の気を引きたいのか」と、肩を見せるような、はしたない服装をするなと、母親に怒られて
泣いていた。やっぱりまだ子供。
母親は怖いようだ。
母親によく怒られている。どこの国の母親も一緒だなあ。
いつもは「ロロ、ロロ」といって人懐っこいのに、そういうときはすごい顔をしてふくれている。
「スマイル、スマイル」と言っても無視する。

フィリピンでは、総じて親の権威は日本なんかよりはるかに保たれている。
老人の比率の少ないせいか、 老人を尊敬する傾向がまだ残っている。
老人なんて糞食らえの日本からくると、新鮮だし居心地が良い。
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 「この辺一帯は明け方まで賑わっているのよ」
時刻は夜12時をまわっている。
次の日、学校が休み(休みじゃなくてもいる事が多いのだが)なので、11歳のラディース、まだ、煙草を売っている。
この辺は、アドリアティコ一の繁華街。不夜城だ。夜11時ごろからが本番、夜明けまで人通りが途絶えない。
まるで新宿歌舞伎町の雰囲気だ。もっとも、バクラさん、ホモさんが多いので、新宿2丁目の雰囲気もあるかな。

この日は雨模様で少し閑散としている。
そろそろ母親がきて交代するだろう。
ラディースの隣りにいるのは、ロナルドさん。
バランガイ(フィリピンの最小の行政単位)の委託を受けて、この辺一帯を見張っている。
ロナルドさんは、埼玉の工場で2年ほど、働いたことがあるので、ごく簡単な日本語を話せる。
すぐ近くに自宅があり、下宿業、カリンデリア、ランドリー、ビリヤード場などを地域のフィリピン人相手に小規模ながら手堅く営んでいる。
よそ者の私達にとって、頼りになる相談相手だ。
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この辺には、佐太郎、若い友達が大勢いるんだぜ。
わたしの指定席、ココス・ネストのテーブル席。後ろはバーガーマシン。
男二人は、隣りのマラテ・ペンションの従業員。
ラディース以外の女の子はカリン(?)という名の19歳。?をつけたのは、聞く度に違う名を言うんだ。ちょっと影のある子で、ひねくれたところがある。
イラン人とのハーフなのだそうだ。
妊娠2ヶ月を過ぎていたのに、カップ麺ばかり食べていた。
女房が心配して、いろいろ聞いていた。
父親はわからないのか、わかっていても言わない。
以前は、すぐ近くのディスコに入り浸りだったらしい。
この先、どうするんだろう。
来年1月に行くときは、お腹も大きくなっているよな。

「誰も育てる人がいなかったら、私もらってもいい?」と女房が突然言った。
時々、女房の考えていることがよくわからない。
でも、「いいよ」と私は即答していた。
それも、神様のお導きだよな。大切な命だ。


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このあたり一帯は、今激変しているんだぜ。
真ん中にある、赤いカウンターのような枠がラディース親子の新しいお店。
バランガイのプロジェクトで、バランガイに公認されたことになる。
借金して購入したとのこと。
煙草以外に、フィッシュボールなど、軽食も売り始めたそうだ。

女房の電話の話によると、「ココスネスト」の隣りとその後ろ側に、新しい屋台店が2軒できているとのこと。
なんだか、この駐車場。屋台村にでもなりそうな勢いだ。
1月に行くのが楽しみだ。

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ラディースに会うのも楽しみだ。
お土産を頼まれていた。何を買っていこうかな。

by wakahiroo | 2006-10-26 07:38 | ○マラテ迷宮案内
2006年 09月 13日

一杯のグリーンマンゴ・シェーク

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歩いた。歩いた。
久し振り、長距離を歩いた。

2002年、脳出血で倒れてから、その後遺症で、佐太郎は、普通にスタスタ歩けない。
自分で「よたよた歩き」と評しているが、安定感のない危なかしい歩き方をする。もちろん、歩行速度も普通の人よりはるかに遅い。
以前は健脚を自負していた。というより、歩くのが好きだった。
歩ける距離なら、乗り物を使わず、歩いたものだった。
ジョギング、山歩き、東南アジア放浪と、足を使うものを好んで趣味としてきた。
その佐太郎、自由に歩けなくなっても、歩くことには人一倍、執着がある。
見かけがどんなに悪く、危なかしくても、関係ないさ。
「趣味は何ですか」と聞かれたら、今はためらうことなく、「ウォーキングとパソコン」と答える。
目に飛び込んでくる景色を見ながら歩いているとき、生きているという充実感を味わうことができるんだ。
誇張じゃないぜ。
二度、歩けなくなって入院し、車椅子のお世話になった。
歩くことができることって、素晴らしいことなんだぜ。

失って始めて、人はその価値を認識する。
幸せって、ごくありふれた、身近なところに存在する。

持っていないことに不満を感じて自分から不幸になっていないかい?
遠くに青い鳥を探しにいっていないかい?
幸せはすぐそばにあるぜ。

他人との比較から感じる幸せは偽りの幸せ。
真の幸せって、自分の心の中にあるんだぜ。

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ベイ・ウォークを通って、フィリピン・プラザ・ホテルまで歩く計画を立てていたが、雨で延び延びになっていた。
佐太郎は、一度思い立ったことは断固実行に移す実行力の人なのだ。

が、事態は思わぬ方に展開した。
昼11時半、アパートを出発。
天気は良い。そろそろ雨季は終わったのかな。
暑い。

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ここは、唯一、足の悪い私が、余裕を持って安全に、ロハス・ブルバードを渡ることのできる横断歩道。
他の、横断歩道では、怖い思いを何度も体験した。
まだ青なのに、バイクが群れになって疾走してきたり、渡っている途中で赤に変わってしまったり・・・
もう走ることのできない私は命懸け。
生きることにあんまり未練はないけれど、最期に痛い思いをしては死にたくないんだ。
佐太郎は、時にはこわがりの小心者なのだ。

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かんかん照りの中の太公望
この暑い中、よくやるよ。
動きも心なしかせわしなく、釣りを楽しむという雰囲気ではない。
趣味より実益の要素が強いみたいだ。
今夜のオカズでも釣っているのかな。
ともかく、太公望という言葉はふさわしくない。釣り人に訂正するね。

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ヨット・ハーバー
写真ではきれいに見えるかもしれないが、ゴミが浮かんでいたりして汚くて臭い。
そういえば、思い出した。
去年の暮れ、歩けなくなる少し前、ラスピニャスで日本食レストランを営んでおられる福松さんという方とここに来たんだ。
福松さんの友人の整備中のヨットを訪問したんだった。
ただただ臭かった。

その後、入院するなど大変なことがあり、すっかり忘れていた。
嗅覚が、記憶の片隅に残っていた、このヨット・ハーバーの一件を思い出させてくれた。

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ネービーの前を通り、カルチュラルセンターのところで右に折れれば、ほぼ一本道。
右手にはハーバー・エリアを見ながら、さらに先に進むと、写真のような退屈な光景。
歩いている人もまばら。

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着いた! フィリピン・プラザ・ホテルに。
何度も、子供達と泊まりにきているのだけど、表の車寄せを見る限り、あまり記憶にない。
そうそう、プールで溺れかけていた欧米人の子を助けてひどく感謝されたことがあった。
裏のプールの方に行けば記憶がよみがえるかもしれないな。

ここで引き返して、ハーバー・エリアで食事をして帰る予定でいた。
だが、もったいない。まだ余力があるのだ。
ええい、この際、できたばかりだというSMエーシアという大きなモールへ歩いて行っちゃうか。
佐太郎は、時には軽薄な気分屋なのだ。
正確な位置は知らない。だいたいの方角だけはわかるので、行けるところまで行っちゃえ。
佐太郎は、時には向こう見ずな賭博師なのだ。

てなわけで、出発したのだけれども、歩いている人など、私以外に誰もいない。
嫌な予感はした。
男児、いったん、志したことを軽々しく止めるわけにもいかない。
佐太郎は、時には一途の頑固者なのだ。

故障を直していたタクシーの運ちゃんに道を聞くと「ヴェリー ホット、ヴェリー ホット、クレージー」だって。
ヴェリー ホットを2回も繰り返しやがる。カラスの勝手だろ。←相変わらず、古いなあ。
車が直ったら乗ってけ、というニュアンスでもなかった。
クソ暑い中、この足の悪いハポン、よくやるよ。本当に気違いじみていると思っていたのかもしれない。

この辺は急ピッチで街を造成している。
できたばかりらしい、マーケットのスタンドでフレッシュ・マンゴ・ジュースを飲む。45ペソ。
旨い!息を吹き返す。気持ちを新たに出発。

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だども、写真を見てけれ。
何にもないべや。
路面の遠くが濡れて見えるナントカ現象、逃げ水?
とにかく、名前を忘れた現象が遠くに見える。
歩いていて見るのは始めてだった。

暑い、クソ暑い! あの運ちゃんが正しかった!
何やってんだろう、俺。
もうこうなったら、意地だけだ。こんなところで挫折なんかできるかい。
佐太郎は、時には不屈の頑張り屋なのだ。

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野っ原の真ん中に、見えてきた。あれだろ、あれ。
もう一息だ。
元気が出た。
巡回中のポリスのオートバイに意味もなく敬礼。
佐太郎は、時にはひょうきんなお調子者なのだ。


あれが違っていたら、意地もプライドも何も捨ててやる。
へたっていた。
佐太郎は、時には日和見主義的現実主義者なのだ。

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着いた!SMエーシアへ。
初志貫徹。やるじゃないか、佐太郎。
お前は、やっぱり、の一度思い立ったことを断固実行に移す根性の男よ。
えっ、お前、始めSMエーシアへ行くなんて思い立ってなかったって。
細かいことは抜き、抜き。良い気分に浸っているのに。

もう建物の中に入る気力なんぞない。
建物の周りに作られた、写真のお店に腰を下ろす。
まずは、グリーン・マンゴ・シェイク。涙がでるくらい旨かった。
わかった!
今日のウォーキングは、この一杯のマンゴ・シェイクのためにあったんだ。
マンゴ・シェイクを味わうために。
神様も味なことをやるわい。

「一杯のかけそば」ならぬ、佐太郎の「一杯のマンゴ・シェイク」の一席、お粗末でした。

それから、海老テンプラのランチ。130ペソ。いっきにかきこむ。
こんなの蛇足。

到着したことに満足。
さあ、帰ろう。
帰りは、もちろん、タクシーさ。

これって、SMエーシアに行ったことがあるって、他の人に言えるのかな?
軽い疑問は残ったのさ。

by wakahiroo | 2006-09-13 13:24 | ○マラテ迷宮案内