隠居生活☆東京・マニラ行ったり来たり

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2006年 11月 10日

バクラ的生き方──ノエルの場合

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バクラとは、フィリピノ語でオカマのことだ。
バーガーマシンの店長的存在ノエル、24歳。バクラ(オカマ)が入っている。
声が甲高く、フィリピノ語なのでよくわからないが、多分、オネエ言葉的なものを使っているのだと思う。立ち居振る舞いは女性的。
でも、頭の回転が早く、客の心をつかむのが上手だ。
向学心も強く、日本語を独学していた。
ノエルのいるところは笑いが絶えない。
一緒に話していると心が癒される感じがする。
社会的弱者は人の心の痛みがわかるのかな。

ラディースとは、姉妹(断じて兄弟ではない)のように仲が良い。
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フィリピンは日本より、はるかにバクラは社会的に許容されている。
そういう面では、フィリピンは日本より進んでいる。
(フィリピンは日本より文化的に遅れていると信じ込んでいる単細胞の人たちも多いので、あえて言っておくぜ)
少数派には優しい寛容な社会だ。
だから、ノエルも自分が、バクラ的であることを隠しはしない。

オカマという言葉は、新宿2丁目も行動範囲にしていた佐太郎にとっては、嫌なマイナスのイメージを持った言葉だ。女装をして、「カマをほる」という、つまり、アナル・セックスで己の性を売る女(?)、あるいは、オカマバーに出て、女の心を持った男として媚を売るホステス(?)という商売の影を連想させるのだ。顔見知りはかなりいたけど、距離をおいて友達というほどの付き合いはしなかった。
でも、一般的には、少し差別のニュアンスを含めて、女の心を持ち、女性的立ち居振る舞いをする男というくらいの漠然とした意味で使っている場合が多いのかな。
かといって、「性同一性障害」という言葉も好きではない。この言葉は、身体的に男性なのに性自認が女性である(もちろん、逆もある)人達を精神病ととらえているんだよな。
この人達、決して精神病じゃないって。

厳密には「フィリピノ語のバクラ=日本語のオカマ」でないことも確かだ。
言葉というのは、その言葉の使われる文化の中でその意味が存立するんだよな。
「バクラ」は「オカマ」より、緩やかな優しい意味合いを持った言葉のような気がする。
バクラという言葉一つからでも日比文化比較論が展開できそうだな。

ノエルは、同じビサヤ出身ということもあって、私よりもむしろ女房と親しい。
でも、ノエルと付き合うようになって、バクラ的生き方というものをある程度理解できるようになった。
そして、バクラの人達を意地悪な眼を持って特別視することもなくなった。
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あたし、バクラなのよ。
女の子とは良いお友達にはなれるけど、少しも心がときめかないの。
あたし、仕事の営業成績は良く、会社から信用されているのよ。
でも、仕事中、女の服装をするわけにはいかないのよねえ。
あたし、ビサヤのマンドゥリケ島出身よ。
若い頃は、スカートをはいて、男の子とよく踊りにいったのよ。
最近、悩んでいるのよ。
わかっているわ。
あたしももう歳だし、女の心を封印して、将来のために、仕事に専念しなければならないって。

難しく説明すると「社会適応性の向上のために自己の性自認とは異なった性役割を意図的に選択する」ということかな。

でも、女を捨てて男として生きるのって自分を押し殺して生きるってことなのよ。
つらいのよ。ストレスがたまるのよ。

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性同一性障害(Gender Identity Disorder)について、少し学習しておこうか。
身体的には男性であるが性自認が女性であるケースをMtF-GIDと呼ぶ。 MtFは、Male to Femaleの略。その逆はFtM-GID。日本では「おなべ」なんて言っているよな。

性同一性障害者も一般の男女と同じく、自分の心理的性別に相応しい服装を好み、自分の心理的性別と反対の性を恋愛対象とすることが多い。そのため、身体的性別を基準にして観察すると「異性装を好み」「同性を恋愛対象とする」ように見える。
混同されがちであるが、性同一性障害と同性愛や異性装とは、全く独立した別個の現象なのだ。←ここは重要。
オカマとホモは違うんだよ。もちろん、一致する場合もあるけど。
上の写真の左端に写っている男性は、正真正銘の同性愛者、ホモだ。
アドリアティコのこの辺り、オカマだけじゃなくホモも多いんだぜ。

性同一性障害の原因は現在のところは不明である。
先天説、後天説、その折衷説、いろいろあるが、最近は「性自認の決定は何らかの生まれつきの差異に拠っている」という説が有力視されるようになっている。
だから、親の育て方が悪いから性同一性障害になるなんていうのは全くの偏見に過ぎないよな。
ノエルのお母さんと弟の写真を見せてもらったが、とても感じのいい人達で、温かい家庭にそだったんだなあと伝わってきた。
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付き合っているわけでも、恋人でもなんでもない。ただの友達。
バクラの特権なのか。バクラって、並みの男からみると、なんだかとても羨ましい面もあるんだよな。
女の子が何の警戒心もなく、近寄ってくる、触ってくる。

女の子にも、際どいエッチな話を平気でする。
女の子は、嫌がりもせず、逆にケタケタ笑っている。

ノエルは冗談が大好きだ。
チャンスがあれば、下ネタの冗談で客をからかう。

夜11時過ぎ、女房とバーガーマシンのカウンターで油を売っていた。
30代のまともな感じの日本人の男が若い可愛い女の子を連れて向かいのカウンターに座った。
チリ・バーガーとペプシ・コーラをオーダーする。
ノエルは、商売熱心。始めて客には必ず声をかける。
チリ・バーガーが出来上がり、客がパクつきはじめたとき、
 「ドウ ユー ライク ホット ペッペエー?」
 「イエス、 アイ ライク ホット ペッパー. イッツ スパイシー.イッツ デリシャス」
ノエル、にやにやしながら、もう一度
 「ドウ ユー ライク ホット ペッペエー?」
 「イエス、 アイ ライク イット ソー マッチ」
ここで、連れの女性が、こらえ切れず笑い出す。
男の客も私もどうしてなのか、わからない。
女房の説明によると、ペッペエーとは、フィリピノ語で、日本語のオチンチンに対応する、女性のそれを指す可愛らしい表現なのだそうだ。
件の客も、連れの女性にその意味を耳打ちされ、理解する。
ノエル、追い討ちをかける。
 「ドウ ユー ライク ホット ペッペエー?」
客は苦笑しながら、連れに目配せをして
 「イエス、 アイ ライク ホット ペッペエー ベリー マッチ」

こんな会話で客との心理的壁を取り払うんだよな、ノエルは。

ご免。エッチな話をしちゃって。
でも、ノエルって、清純そうな女の子にも、お構いなしで、こんな調子だ。
そして、皆、結構、喜んでいる。
佐太郎がやったら、完全にセクハラだぜ。
冷たい視線で、洟をかんだテッシュでも投げられるな。
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by wakahiroo | 2006-11-10 08:57 | ○マラテ迷宮案内


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